―――ぽすん。不意に肩へ乗った重み。首筋に触れる髪がくすぐったい。徐々に速度をあげていく心拍数を諌めながら、そっと手を伸ばす。
意外と柔らかい髪を撫でてみればテレビが見えないと文句を言われたけれど、怒っている様子はなかった。甘えたい気分なのか、単に凭れられる場所が欲しかったのか。
勝己が隣にいる。今更、そんなことを実感する。
昔から努力家で天才肌でもあった彼なら、この粗暴な性格さえ除けば、きっと将来有望な生徒に違いない。このままヒーローになったら、それこそ今画面で見ている彼らのように、テレビの向こう側だけの存在になってしまうだろう。
応援したい反面、顔を出すのは寂しさだった。
「お昼になったら帰るんだっけ?」
「ああ」
「そっか……」
「分かりやすくしょげんなや」
「しょげてないし」
「声が落ちとんだアホ」
鼓膜を揺らすのは、喉を鳴らして笑う音。さっきまで照れていたくせに、もう人の機微に気付くくらいの余裕が生まれているらしかった。切り替えが早いというかなんというか。
全部勝己のせいだよ、とは言えない。こぼれそうな溜息は呑み込んだ。
たとえば今、私が大きな一歩を踏み出せたら。
勝己の重みを肩に感じたまま、そんなことを考える。さっきはあんなに自然と言葉が出て焦ることもなかったのに、思い返せば、なんてことを口走ったのだろうと恥ずかしくなる。笑った顔が好きなんて、そりゃ勝己も照れるわけだ。
意識をすると、いろんなことが難しい。幼馴染という、ぬるま湯に浸っているようなこの関係が終わってしまうかもしれない恐怖心とか。ギクシャクするくらいならって、躊躇ってしまう脆弱さとか。それらを跳ねのけられる何かがあれば、なんて。
まるで私らしくない女々しさに、心の中で苦笑する。覚悟も勇気も、私自身の心意気でどうとでもなるものだ。わかっている。そんなに弱い女ではないと自負している。それでも怯んでしまうのは、きっとこれが、初めての恋だから。
もうそろそろ十時になる。ヒーロー番組が終わると、肩の重みもいなくなった。