あとどれくらいこうしていられるかを案ずるより、これからも一緒にいられるように踏み出すことの大切さへと、均衡を保っていた天秤が傾いていく。
「……なまえ」
「はあい」
「膝、貸せ」
言うが早いか返事も聞かないまま、勝己は私の肩から太腿へとずり落ちた。やはり寝にくかったらしい。眠そうなルビーが瞼に覆われ身じろいだ後、眉間のシワが薄れていった。全く、私はクッションじゃないんだけどなあ。心の中ではそうぼやきながらも、頬はどんどん緩んでいくのだから恥ずかしい。こんな顔は見せられたものではない。勝己が寝ている時で良かった。
幼い寝顔を見下ろしながら安堵する。そうして勝己のせいでずり落ちたカーディガンを整えた。
家に帰ってしまうまで後一時間くらいだろうか。その間に、しっかり心を決めないと。柔らかな髪に指を通しながら、また考える。
今日は朝から頭を働かせてばかりで、そろそろ知恵熱でも出そうな具合だ。思えば人付き合いで悩むことなど、あまり経験してこなかった。彼以外とはそれだけ浅い関係で過ごしてきたし、切れて困る縁もなかった。
恋って難しい。けれど戸惑いを振り切ることは、もう難しくなかった。
いろんな可能性とタイミングをぐるぐる照らし合わせる。今か、自然と起きた後か、帰り際か。なんだかどれもしっくりこない。まあ、玉砕してすぐにバイバイよりかは何十分かだけでも傍にいる方が、これからも友達だというスタンスは崩さずにいられるかもしれない。なんにせよ、伝えないことには現状維持もできないし、何も始まらない。
勝己、と呼ぶ。私の人生の中で、たぶん親の次くらいによく呼ぶ名前。微動だにしない頬をつつくと瞼が小さく震えて、昔から変わらない綺麗なルビーが私を捉える。