(side...上鳴)
「なあバクゴー。行ってやれよ」
「は?ンで俺が行かなきゃなんねんだ」
「何でって、中学の同級生なんだろ?ずっと待ってるかもしれねーじゃん」
「女の子待たすのは良くねえって」
「うるせえ。つーかそもそも行くなんざ言ってねえし、待ってんのはあいつの勝手だろうが。誰も頼んでねえわ」
「そうだけどよ……」
購買で何か買ってこいと渡された千円札を眺めながら、どうしたもんかと息をつく。別にパシられること自体は貸しイチプラス百歩譲って構わないが、前の休憩時間に来ていた小さな女の子が待ちぼうけをくらってしまうのは可哀想だ。切島と二人で説得を試みたけど、当の本人は頑として動かない。どうしたもんか。
そもそも俺からすれば、女子からの誘いを断る気が知れない。結構可愛かったし、なんなら爆豪の代わりに俺が行ってもいいくらいだ。つーか、そうすればいんじゃね?
そしたら爆豪はここで切島と飯食えるし、あの子も待ちぼうけることねえし、俺は可愛い女子と飯食えるし、万事解決万々歳だ。
「よし、そうしよ」
「?」
切島の手に爆豪の飯代を握らせ、ズボンのポケットに自分の財布を突っ込む。大きな目を更に丸めた切島はきょとん、と首を傾げた。
「どこ行く気だよ」
「やー、爆豪の代わりに俺が行くわ」
「え!?」
「は……?」
「だって可哀想じゃん。せめて爆豪は来ねえよってだけでも伝えてやんねーとさ」
「おお、上鳴…!男らしいぜ!」
「おい待てコラアホ面。その後はどうすんだ」
「え?そんまま一緒に飯食おうと思っ」
ボンッ!!!
言い終わるちょっと手前、若干食い気味に轟いたデカい爆発音。いつの間に腰を浮かせていたのか、俺の目前に翳されている手のひらからはプスプス煙が立っていた。あと数センチ近ければ、前髪どころか顔面をも黒焦げにされていただろう。
固まった背中を冷や汗が伝う。それはもう般若のように吊り上がった目で睨まれ、いつものことと言えどやっぱり怖い。こいつマジ敵顔。口角が引き攣るのを感じながら恐る恐る両手をあげれば、地を這うようなド低音で「もっぺん言ってみろや……殺す」って脅迫された。い、意味わかんねえええ。
「え、っと……爆豪行かねえんだよな?」
「行かねえ」
「あの子と飯食いたくねえってことだよな?」
「たりめえだ。誰があんな奴と食うか」
「じゃあ、俺が行っても良くない?」
「………あ゙?」
「いやいやいやいやごめんって!」
マジ意味わかんねえな爆豪!!!
え、何?あの子と飯に行く気はねえのに、他の奴があの子と飯食べんのは嫌ってこと?マジ?どんだけ自己中駄々っ子だよ!ってかそんなら行けよ……!
とりあえず全面から滲み出ている怒りオーラが爆発しない内に、切島と二人がかりで宥めにかかる。少しして漸くいつもの舌打ちをかました爆豪は、ポケットに両手を突っ込んだかと思うと大股歩きで教室から出て行った。何なんだよあいつほんと。