(side...なまえ)




別に、何てことはなかった。
他人に興味なんてなかったし、一人の方が楽だった。信じた分だけ大きく裏切られることは知っていたし、期待した分だけ傷付くことも、気にした分だけ疲れることも分かっていた。何にも干渉されずに生きる方が、私にとってやっぱり楽だった。


一緒に帰ろうと話し掛けてきた名前もあやふやなクラスメートの誘いを断り、A組に足を向ける。私の目よりも深いルビーは、もう帰ってしまっただろうか。それともまだ教室にいるだろうか。絶対的に前者だとは思うけれど、約束をしているわけじゃない。彼の自由であり、勝手だった。いつもそう。いなかったらいなかったで、別に構わない。


彼の傍は居心地がいい。

無理に合わせる必要もなく、くだらない世間話もしない。話題を探して、無理に話すような真似もしない。暴言や罵声は裏表がないことの証明で、だからこそ、私も私のままで居られる。

基本的に、最初から何も要らなかった。友達も味方も、上っ面だけの関係も。でも彼は、勝己だけはそうじゃなかった。自然体の私をそのままの私であると、受け入れてくれるから。



A組の扉を開けて、顔を出す。気付いた麗日さんの大きな瞳が更に大きくなって「爆豪くん?」って可愛い声。


「うん。もう帰った?」
「どうだろ……さっきまでそこにおったんやけど……」
「爆豪ならトイレに行ってるぜ。カバン置いてっから、戻ってくんじゃねえかな」


赤い髪を尖らせている彼は、確か切島くんだったか。太陽みたいな笑みにお礼を言っておく。勝己がつるんでいるだけあって、彼の空気間も嫌いじゃない。A組の皆は気兼ねがない。でも、知り合いが多い空間はちょっと苦手。

二人の間を抜け、切島くんの言葉通りカバンが置いてある勝己の席に座る。待っていたら一緒に帰ってくれるだろうか。近頃、一緒に過ごしすぎていることは自覚している。本気で嫌がられたら、今日くらいは引いてみようか。居心地がいいことに変わりはないけれど、だからといって、私の全てを押し付けるつもりはない。私がそうであるように、彼には彼の自由があるべきだと思う。甘えるのはとても良くないことだと、幼い頃に学んだ。


机に肘を置いて、頬杖をつく。
そうして今日も、私と私以外を遮断する。

いつもと違った角度で見える空には、綺麗な夕焼けが滲んでいた。



ひと掴みの愛想




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