02

「みょうじさんは鍵当番だったんですか?」
「ううん。最後だっただけ」
「一緒ですね」
「そうだね」


頭上から、また小さく笑う声が降ってきて、私もつられて笑う。

話すようになってから気付いたのは、一見クールな彼が意外とよく笑うこと。それに、たわいもない話題を提供してくれる。気を遣わせているのかもしれないし、そうでないのかもしれない。けれど擦れ違った時の挨拶だったり、こうして一緒に帰ろうと申し出てくれるあたり、社交辞令ってわけではないと思う。なんせ、あの木兎の面倒を見ているのだ。たぶんそんなに不器用ではない。いくらバレー部主将の同級生相手といえど、嫌なら上手く躱せるはず。


「木兎は先に帰ったの?」
「はい。木葉さんと」
「え、珍しいね。木葉残んの嫌がるでしょ」
「……あの、前から気になってたんですけど」
「うん?」
「詳しいですね。バレー部員のこと」
「まあね」


返事をしながら、小さな機械音と共に改札をぬける。ホームで足を止めて見上げた先の赤葦は、なんだか迷っているような難しい顔をしていた。


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