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“先程は有難うございました"


コロッケを咀嚼しながら、彼らしい一文にほっこりする。絵文字も顔文字もないシンプルさはイメージ通り。常にビックリマークが並んでいる木兎との違いに笑ってしまう。


“こちらこそ、いつも有難う( ´ω` )"


女の子らしい絵文字でも、送れるようなタイプだったら良かったなあ。送信ボタンを押して、キャベツをむしゃむしゃ。

あいにく連絡ツールなんてものは、普段から必要最低限しか使わない。流行りの掲示板や交流サイトも、なんとなく窮屈に思えて未経験。それでも好きな人には可愛く思われたい、っていうのが乙女心なわけで。せめてちょっとくらい齧っておけばと滲んだ後悔を、白ご飯ごと飲み込んだ。


“登録したいので、フルネームを漢字で頂いてもいいですか?"

“みょうじなまえだよー( 'ω' ) 私ももらっていい?"

“有難うございます。赤葦京治です"


初めて知った名前をコピーして、名字しかなかった登録欄に貼り付ける。なんて綺麗な字なんだろう。名は体を表すと言うけれど、正にそんな感じだ。しとやかで物静か。赴きがあって礼儀正しい。

“赤葦らしい良い名前だね"って文字を打つ。間もなく届いたお返事に、思わず胸が大きく鳴いた。


“有難うございます。俺も今、みょうじさんらしい素敵な名前ですねって送ろうとしてました"


ああ、ずるい。


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