08

放課後になるまで今日一日、電波を通した赤葦とのやり取りは気ままなペースで、けれど途切れることなく続いていた。

もう終わりか。そう思いながら“おやすみ”と送信した昨夜の寂しさが既に懐かしい。話題を探さないと、なんて考えるまでもなく、朝起きた瞬間視界に飛び込んできたのは“おはようございます。今日は雨ですね”って、雨傘の絵文字だった。ついさっき、“雨降ってるけど傘忘れた! バイトねえよな!? 帰り頼む!”なんて送ってきた木兎とは大違いだ。幼稚園児か君は。


「あ、なまえじゃーん。お疲れ〜」
「お疲れー。終わりまでお邪魔していい?」
「いいよ〜。また木兎ー?」
「そんなとこ」


タオルを抱えた雪絵から「だと思ったー」って笑みがこぼされた。

木兎用のビニール傘を立てかけて、体育館の端っこに腰を下ろす。どうせなら何か手伝おうかと思ったけれど、今日はあんまりやることがないらしいのでやめた。うろちょろすると、かえって邪魔になってしまう。


「木葉ナイッサー」

「カットしっかりなー!」

「レフトー!」


スキール音や皆の声が、頻繁に鼓膜を刺激する。赤葦へと返ったボールが綺麗にあがり、木兎が飛んだ次の瞬間、重いスパイク音が轟いた。きっとドンピシャだったんだろう。眩しい笑顔とはしゃぐ声に、なんだか私まで嬉しくなるのはいつものこと。

木兎と一緒にいる内にすっかり慣れ親しんだそれら全ては、昔からずっと、心地がいい。


prevnext


back



back to top