再不斬の弱点は現状ほぼない。カカシ先生並みの強さに波の国という地理的な優位性もあちらに分がある。霧に紛れてしまえば、私達は奴を感知することができないのだ。
 けれど再不斬は圧倒的に私達を舐めてかかっている。それを利用する他ないだろう。

 序盤に出てきた霧隠れの忍達にやったようにタズナさんに化けて、本物のタズナさんをどこか安全な場所に避難させるのも手だ。
 けれどそれをするには不確定要素が多すぎる。あの時は周囲をカカシ先生が見張っていたため出来たことだが、先生はすでに拘束されているから。

 おまけにここは波の国。他にも霧隠れの忍達が息を潜めて窺っている可能性だってあった。

 作戦なんて練っている暇はない。ナルト君とサスケ君を見れば同じことを思ったのか頷いていた。

「………本当に成長しねえな。いつまでも忍者ごっこかよ。オレあよ、お前らくらいの歳の頃にゃ、もうこの手を血で紅く染めてんだよ」

 私達の姿が滑稽に見えたのだろう。

 再不斬は霧隠れの里にいた頃の自身の生い立ちとアカデミーの卒業試験で何百人もの同級生を殺害したことを語るが、奴がやばい奴だというのは百も承知だ。
 
「楽しかったなあ、あれは………」

 再不斬がぞっとするような笑みで私達を見つめる。

 川の水面に佇む本体の再不斬と水牢の中に拘束されるカカシ先生。そして私達の目の前には薄暗い笑みを浮かべる水分身の再不斬。

 闘いが始まる。




 ◇




 再不斬が一瞬姿を消したかと思うと、一番近くにいたサスケ君目掛けて斬り掛かろうとしていた。
 瞬時にワイヤー付きのクナイを多数飛ばし、再不斬を拘束する。

「こんなん足止めにもなんねえよ!!」

 ワイヤーを無造作に引きちぎり(耐久性の優れたものだったのだが何故引きちぎれる……?)狙いを私に定めた。
 しかしその瞬間、あらかじめクナイに貼り付けていた起爆符が爆破される。

「ナルト君!!」
「おう!」

 爆破に巻き込まれたとは言えおそらく無傷であろう。
 けれど隙は生まれたはずだ。それを一瞬にして理解したナルト君が印を組む。

「影分身の術!!」

 何十人もの影分身が再不斬の周りを囲み、一斉に襲い掛かる。だが、決定打にはならず体の軽いナルト君の分身達は投げ捨てられあっという間に殲滅された。

 次はどうする?どう仕掛ける?

 するとナルト君がリュックの中から巨大な風魔手裏剣を取り出した。

「サスケェ!!」

 サスケ君に渡されたそれにナルト君の企みを理解する。
 私達がサバイバル演習でやったことをやろうとしているのか!彼もそれを理解したのか薄く笑みを浮かべていた。

 サスケ君が跳躍し風魔手裏剣を飛ばす。風を切るように放たれたそれを再不斬が刀で弾こうと構えたため、咄嗟に私は奴に飛び掛かった。

「チッうざってえな……!」

 しかし呆気なく蹴飛ばされてしまった。ゴム毬のように吹き飛ばされてしまい何だか恥ずかしい。私、よわーー!

 だけど、それで良い。風魔手裏剣が叩き落とされないならそれで良かった。弓形に曲がる手裏剣は再不斬をぐんと通り過ぎ本体に向かって軌道を描く。

「なるほど。小娘は陽動で、本体を狙ってきたってわけか……!が、甘い!!」

 本体の再不斬が片手で手裏剣を掴む。しかしその影からもう一つの手裏剣が現れた。影手裏剣の術だ。だがそれも再不斬によって避けられる。

「外れた!」

 タズナさんが叫ぶ。と、同時に風魔手裏剣はボフンと煙を立てた。中からクナイを構えたナルト君が現れたのだ。

「ここだあああああ!!!!」

 ナルト君がクナイを飛ばす。目標は本体の再不斬の腕。そして飛来したクナイによって再不斬が水牢から手を離した。
 
 すると次の瞬間、カカシ先生を拘束していた巨大な水の玉は形を崩した。

 カカシ先生がようやく解放されたのだ。




 ◇




「ナルト、作戦見事だったぞ。成長したな。お前ら……」

 逆上した再不斬がナルト君に刀を振りかざしたが、それをカカシ先生は間一髪で止めた。血を流しながら片手で刃を押さえる先生は完全に切れている。

 理性はあるだろうが、これから行われるだろう先生と再不斬の闘いを察知し急いでナルト君を回収しに行った。

「ナルト君、本当にお疲れ様。でもここにいたら巻き込まれるよ」

 川からナルト君を引き上げ、慌ててサクラちゃん達の待つ場所まで移動する。

 闘いはすでに始まっていたのか、その瞬間川の方面から巨大な爆発音がした。振り返れば竜の形をした巨大な水柱が二柱現れ、凄まじい音を立てて衝突する。

 膨大なチャクラを使った術の数々。写輪眼により確実に再不斬を追い詰めるカカシ先生。嵐のような攻防。
 あまりにも衝撃的な光景に私達はただ呆然と立ち尽くした。

 もう、これ、一体どうなるんだ。

「ねえ、これって忍術なの……?」

 サクラちゃんが信じられないような表情をして呟く。
 


 しかしそれは思わぬ来訪者によって幕を閉じることとなった。

 どこからともなく現れた霧隠れの追い忍の少年が再不斬の首に千本を突き刺さし、奴は呆気なく死んでしまったのだ。







 | 

表紙へ
top