「お忙しいところ大変申し訳ありません。カカシ先生、現在ガトーが大勢の手下を引き連れて橋にやって来ているそうです。おまけにカカシ先生との闘いで疲弊した再不斬をタズナさん諸共始末すると聞きました」
「………………は?」

 どうしよう、どのタイミングでカカシ先生のところに行こう!?
 そう思っていたところ、やっとチャンスが舞い降りた。



 ガトーの企てをすぐさまカカシ先生に伝えたかったが、急に周囲が濃霧に包まれてしまった。

 再不斬とカカシ先生が交戦しているのは音や霧向こうに浮かび上がる影によって何となく分かる。しかしそのまま彼らの戦いに突っ込めば、私は巻き込まれて死ぬだろう。

 そう思いどうしようかとタイミングを窺っていると、その霧がうっすらと徐々に晴れてきた。

 もしかしたら決着着いたのか?と恐る恐る近寄り目を凝らして見てみれば、中からたくさんの忍犬達に拘束された再不斬と対峙するカカシ先生の姿が現れる。

 今しかない!

 そして慌てて先生のもとへ駆け寄り、冒頭の言葉を言ったわけである。

「ホタル、珍しく空気が読めてないぞ」
「すみません。あえて読まなかったのですが……、じゃなくて大変なんです。さっきも言いましたが、ガトーがたくさんの手下といっしょにこっちにやって来ているんです。……… 再不斬も始末するって!再不斬も!始末するんですって!」
「落ちつけ落ちつけ」

 ガトーが再不斬諸共始末しようとしていることを、わざと本人にも聞こえるよう大声で言い放つ。
 私達と戦ってる場合じゃないですよと思いながら、ちらりと再不斬を見れば彼は訝しげな表情をしていた。

「それは確かなのか?」
「はい。ツナミさんを人質にしようとしたガトーの手先から聞き出しました」

 すると多くの忍犬に噛みつかれ、血塗れの姿で拘束される再不斬が睨んできた。

「おい、小娘。適当なこと吹かすな。これはガキの遊びじゃねえんだぞ」

 適当なことを吹かすためにわざわざこんな戦場に飛び込むわけないでしょ!そう思ったがふと不安になる。
 ……あのチンピラが言ってたことって本当なのかな。再不斬にそう言われると急に自信がなくなってきた。

「ガトーの手先から教わりましたが……。ただこんな信憑性もないことを、カカシ先生の攻撃の手を止めて話すくらい私は真剣です」

 情報の真偽は定かではないが、とりあえずふざけていないということを伝える。
 そしてカカシ先生はというと眉間に皺を寄せて考え込んでいる様子だった。

「…………どうします?再不斬と一時休戦してガトーに備えるか、それか今ここで確実に再不斬を始末するか」

 ただ一時休戦したとしても再不斬が私達と一緒に共闘してくれる確率は低い。というか私達を置いてすぐさま逃げるはずだ。まあ、前者の方が互いにこれ以上チャクラを消費しなくて済むが……。

 ポーチの中を探り、チャクラ増強剤の丸薬があることを確認する。

 もしあのチンピラの言う通り、ガトーの企みが本当ならば100人以上もの敵を相手取るのは難しいだろう。カカシ先生は再不斬との戦いで疲弊しているし、私達部下4人だけで大勢のチンピラを蹴散らすのは現実的ではない。
 しかしチャクラ増強剤の丸薬が手元にあるのだ。それをカカシ先生に飲ませればまだ勝機はある。
 完全に人任せであるが、一番可能な手段だろう。

 …………それにしても再不斬も不運な人だ。

 今こうしてカカシ先生によって命を握られ、雇い主のガトーから裏切られる。すでに前金が払われてるなら良いが、後払いか分割払いであるのなら踏んだり蹴ったりだろう。

「小娘、その目は何だ………」
「す、すみません。目を閉じます」

 再不斬がぎらりと睨んでくるのに耐えられず目を逸らした。



 ───するとその時、ガチャガチャと刃が擦れ合うような音がどこからともなく聞こえてきた。
 荒々しい大勢の足音に喧騒。かすかに白む霧向こうから、何かの大群が押し寄せて来る気配がした。

「おーおー、派手にやられて。がっかりだよ。再不斬………」

 先頭に立つのは黒いスーツを着た初老の男。その背後には大小様々な武器を持った大勢の荒くれ者どもが並んでいた。

 そして集団の中にツナミさんを人質にしようとした侍崩れのチンピラ達の姿もおり、私は咄嗟に手で顔を隠す。

「そこのガキ!!よくも俺達を騙しやがったな!?相棒は裏切ってなんかなかったぞ!!」

 どうやら彼らはあれから合流したらしい。
 逃げ切った先の同士討ちを狙っていたのだが、2人の絆は確かなものだったようだ。

「嬢ちゃんが部下から情報を引き出したのか。こいつらの落とし前は働き次第で考えようと思ってな」

 ああ、やばい。完全に目を付けられている。おまけにカカシ先生からの「お前本当に何したの?」という視線もめちゃくちゃ痛かった。

「嬢ちゃんが俺の企みを再不斬に話すと思い早めに来てみたが……。どうやらその通りだったようだな。ここで逃げられでもしたら、後々お前は報復しに来るだろう。それなら他流忍者同士の討ち合いで弱った今、数で攻め殺す。………お前に金を支払う真似もしなくて済む、良い手だと思わないか?」

 ガトーの言葉に再不斬は唸る。

「テメエ、最初からそのつもりだったんだな?」
「クク……、そんな分かりきったことを聞くな」

 そしてガトーの後ろに控えるチンピラどもが下卑た笑い声をあげる。大勢の男達の声が橋に響き渡った。

 私が情報を得たから早めに来たという聞き捨てならない台詞が吐かれたのは気のせいではないだろう。や、やばい。これ、私のせいになるのか?いや、でもガトー達は遅かれ早かれ襲撃しに来る予定だったし……。

 いつの間にか再不斬を拘束していた忍犬達は消えていた。血塗れの姿で立ち尽くす彼はガトーを鋭い眼光で睨んでいる。

「カカシ、戦いはここまでだ。オレにタズナを狙う理由がなくなった以上、お前らと闘う理由もなくなったわけだ」
「ああ……」
「白!まだ動けるならこっちに来い!」

 するとその時、どこからともなくお面の少年が再不斬の横に現れた。いや、お面はすでに付けておらず、顔が晒されていた。
 あれ、この子どこかで見たことがあるような……。

「話は聞いていたか?」
「はい。………あの外道が。忍を裏切っておいて只で済むと思っているようですね」

 ちらりと背後を見れば霧はとうに晴れ、彼の出した魔鏡は消滅していた。ナルト君達は無事なようで、こちらにやって来る。

 ここからどうします?とカカシ先生の顔を窺えば、先生は首を縦に振った。
 どうやら話の展開的に再不斬と白と呼ばれる少年がガトーやチンピラどもを何とかしてくれるそうだ。落とし前というやつだろうか。

 いや、でも傷だらけの彼らだけで何とかなるのかなと思ったその時、「ナルトの兄ちゃん!」と背後から声がした。
 見ればイナリ君と波の国の島民達が各々武器を構えて立っている。

「イナリ!!」
「へへ、ヒーローってば遅れて登場するもんだからね!」

 手負の再不斬に白という少年。そして波の国の島民達。
 するとナルト君が印を組んだ。

「オレ達も加勢するってばよ!」

 その瞬間、ナルト君の影分身が現れる。そしてカカシ先生も印を組んで影分身の術を発動させた。
 そうだよね。島民の人達が関わるのなら話は別だ。民間人である彼らに危害が加わるのなら加勢することも辞さない。

 手負の再不斬だけかと思っていたガトー側は、よりにもよって島民達や私達も相手取らなければならないことに顔が引き攣る。

 それが何だかあまりにも哀れであった。








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