それから2週間後。
 完成間近の橋の近くで第七班とタズナさん率いる波の国の人達が集まっていた。
 橋の建設の大部分は終わり、波の国との交渉も終えることができたため、私達は木の葉の里に帰ることになったのだ。
 
 ナルト君達は橋の工事を積極的に手伝っていたのか、波の国の人達と仲良くなったらしい。大勢の人に囲まれて別れを惜しまれている。
 一方私はというと、波の国との交渉の心労からか顔色を悪くしていたため「大丈夫か?」と心配されていた。

 な、何だこれ、めちゃくちゃ締まらないぞ……。

「嬢ちゃん、大丈夫か?………本当に世話になったな」
「大丈夫ですよ。それに私は準備をしただけで実行したのはタズナさん達ですから」

 タズナさんがこちらにやって来て礼を言ってくる。

 私がやったことと言えば、波の国から撤退する旨が書かれたガトーの念書と国家プロジェクトであるにも関わらず資金繰りが芳しくないという名目でサポートが不足していたことを交渉材料に、木の葉の里への賠償金諸々を支払う義務が国政側にあるという指摘(暴論)を婉曲的に伝える術をタズナさん達に教えただけであった。

 そして波の国との直接的な交渉は全てタズナさんや島民代表の大人達に任せたわけである。

「まだ詳細は詰められていないが、大名様は木の葉の里に正式な形で賠償金を払うと約束してくれた。その念書をどうか火影に届けてほしい」
「もちろんです。…………もし、それでもタズナさんに何らかの制裁が加えられてしまったら申し訳ありません」
「なあに、一度諦めた命だ。ガトーは始末できたし橋もほぼ完成しておる。もう思い残すことはない」

 そうしてタズナさんがあっけらかんと笑う。

 タズナさんや島の大人達から話を聞くに、大名から「何故もっと早く相談しなかった!」とこっぴどく叱られたらしい。

 結局私が色々考えた交渉案よりも、大名の温情とタズナさんの【人に放っておけない】と思わせる人柄によって事がうまく運んだような気がする。
 タズナさんに支払われるはずだった報奨金はカットされたが、それでも彼は晴れやかな顔をしていた。

 するとカカシ先生が私達第七班を呼ぶ。

「おーい、お前ら。そろそろ行くぞ。………それじゃ、色々ありましたがお世話になりました」
「タズナのおっちゃん!みんな!また波の国に遊びに来るってばよ!」

 ナルト君が元気に言う。
 それにナルト君と仲良くしていたイナリ君が涙ぐんだ。

「イナリィ、お前ってば寂しいんだろー!泣いたって良いんだってばよぉ!」
「泣くもんか!ナルトの兄ちゃんこそ泣いたって良いぞ!」

 言い合いながらも2人して泣く少年達に苦笑する。

 こうして私達は任務を終え、木の葉の里に帰還した。



 後日、私宛にタズナさんから手紙が来た。
 波の国と木の葉の間に正式な契約が結ばれたらしい。どうやらタズナさんへの制裁もなかったようでほっと安堵する。

 そしてあの橋は【ナルト大橋】と名付けられたそうだ。「嬢ちゃんには随分世話になったが、ナルトの小僧にも世話になったし、その、イナリの喜ぶ顔が見たくてな……」と申し訳なさそうに書いてあったのが何だか和む。
 孫を溺愛するお爺ちゃんみたいでとても微笑ましかった。




 ◇




「まーた、飼い猫探し!俺達ってば波の国で大活躍したのに、なーんでこんなショボい任務をやんなきゃいけないんだってばよ!」

 波の国から帰還後、第七班は以前のようなのんびりとした任務をこなしていた。
 通算何度目かの脱走となる飼い猫トラを捕まえて、ナルト君がぎゃあぎゃあと叫んでいる。

 平和だ。ずっとこんな日常が良い。

「先生、この後お話したいことがあるので少しお時間いただけますか?」

 トラを捕獲しているナルト君に、前を歩くサクラちゃんとサスケ君。彼らを後ろから眺めながら、カカシ先生に小さな声で言う。

「ん?良いぞ。俺もホタルに話しときたいことがあるしな」

 カカシ先生の話しておきたいこと……?何だか嫌な予感がするが私もどうしても伝えたいことがあった。

 そう、今日をもって私は忍を辞めるつもりでいる。

 ずっと前から辞めたい辞めたいと思っており中々タイミングが掴めずにいたが……。任務が落ち着いている今、このタイミングで辞めるのが最良だと判断した。

 というのも、やっぱり私に忍は向いていない。

 痛いのも辛いのも嫌だし、死ぬのも嫌。
 それにここは忍の世界であり、人間は元々残酷な生き物だからやらなきゃやられる。
 両親の死やアカデミーの教育、また忍という業界の噂から【敵を殺す】ということについて割り切って考えないといけないが、そういうのは正直言ってもう勘弁したい。

 そして懐にしまった退職届を確認し、私はカカシ先生の後について行った。



 




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