携帯のアラームで目が覚める。入れ替え戦までの1週間のうちの3日目。昨日、一昨日、あっくんとキミさんのペアはなにもしませんでした。2日間、ただアイス買いに行って、ただだらだらと過ごしてただけでした。……これ私の所為じゃないよね?
「おいマキ、アラーム鳴ってんぞ」
「はーい……、今止めますー……。っておい」
なんであんたが私の部屋にいるの? あれ、もしかして私鍵かけてなかった……?!
「お前、寝癖ひでえな。ちゃんと髪乾かしてから寝ろよ」
いや、私の寝癖のことはどうだっていいよ。問題はそこじゃないよ。そしてちゃっかりベッドに座り込まないでよ。ここ、私の部屋であってるよね? あっくんの部屋じゃないよね? とか、そんなことを考えていると、あっくんはおもむろにポケットから鍵を取り出した。ネズミーさんのストラップのついた鍵。うん、それは間違いなく私のだね。
「……ちょっと待ってください。それ、私のですよね?」
「見てわかんねえ?」
「いや、わかるよ。わかりますけど。なんでそれをあっくんが持ってるの」
「廊下に落ちてたんだよ。拾ったのが俺で良かったと思いな」
そう言って、あっくんは私に向かって鍵を放り投げてきた。それをキャッチしてお礼を言う。
「えー、うそ、落ちたの気付かなかった……」
「ストラップが付いてんのに落としたの気付かないとか、相当だなお前は」
「いやあ……、あ、急いでて走ったときかもしれない。落としたの」
そう、死にもの狂いで走ってたからな、あの時は。
「おいおい、廊下は走るなって小学校で教わったろー」
「テニスコートで処刑と称した一方的な暴力を振るってる人間に言われたくないんですけど」
うるせえ、って言われたけど、確実に程度がひどいのはあんたの方だから。いや、そんな事よりも……。
「ねえ……、昨日、鳳凰さんなんか言ってた……?」
「そりゃ言うだろ。丸一日寝てたワケじゃねーし」
「違うよ、そういうことじゃなくて……、怒って、なかった……?」
私が遠慮がちにそう訊くと、あっくんは、途端に哀れんだような表情になった。ちょっと、なんでそんな顔になるの……?
「お前、なんかやらかしたんだろ」
「…………いっそ、堂をつけて、腹話術師になったら良いんじゃないの。って冗談で話してたたところをご本人に聞かれた」
「なんかいつもよりサーブの威力が増してた理由はそれか」
「うわぁ、フラグじゃん……。謝りに行った方が良いよね……」
「当たり前だろ。お前の心ない発言のせいで、鳳凰の心は大いに傷付いたんだからな。そしてそのせいで、俺らの中から負傷者が出る可能性もあるんだからな」
「え、ちょ、私のせいじゃないよ、もとはと言えば修さんと奏多さんが……」
「責任転嫁は見苦しいぞー」
「これは陰謀だよ! 2人に嵌められたんだって!」
「なにサスペンスで犯人に嵌められて実は犯人じゃないのに犯人に仕立て上げられちゃった被害者、みたいなこと言ってんの」
「あっくんのその例えのほうがなに言っちゃってんの。私、実際に被害者ですから!」
「まあ、とにかく謝ってこいよ」
「え、ひとりで?」
「他に誰がいんだよ」
「いや、あっくんついてきてくれないの? って」
「言っとくけどな、俺はなにもしてねえ」
神に誓って。とか言い始めた。あんたは髪にでも誓っとけばいいよ。
「だってほら、保護者的ポジションのひとが要るっていうか……、ねえ?」
「なんの話し合いを付けに行くんだお前は」
「私は無罪で、悪いのは修さんと奏多さんです。って言いに行く」
私がそう言うと、あっくんはうわあ、みたいな顔をして、お前見苦しいな、と言ってきた。から、無言で頭を引っぱたいてやった。それから無言のまま、あっくんの腕を掴んで部屋を出る。痛いって、と抗議の声が聞こえたけど、それを無視して廊下を歩く。濡れ衣を着せられたままでいるなんて絶対に嫌だ。修さんと奏多さんはあとでとっちめてやる。と密かに決意しながら。