壮絶なる誤解

キミさんに”試合をするから”とお呼びのかかったあっくんは、私とサブちゃんと3人で雑談していた輪を抜けてコートへと向かった。遠ざかっていくあっくんの背中を見送りながら、サブちゃんはぽつりと呟く。

「ホンマ羨ましいわー、遠野さん」
「なんで?」

私が首を傾げると、彼はバッとこっちを振り向いて力説するように両手を広げた。

「だって、幼馴染みなんですよ? マキさんと!」
「え、う、うん。そうだけど……」

突然周知の事実を突きつけられる意味がわからなかったけど、事実なのでとりあえず頷く。そしたらサブちゃんは「ええなー! 俺もマキさんと幼馴染みやったらなー! 絶対人生もっと楽しかったんやろなー!」と、天を仰いで大袈裟に自分の運命を嘆き始めた。大袈裟だな、と思いながら見ていると、サブちゃんは突然、”閃いた!”とばかりに顔を輝かせて私の手を握る。

「マキさん、今から俺と幼馴染みしてくれません?!」
「え? …… なにそれ、どういうこと?」
「”幼馴染み擬似体験”ってことです!」
「……要するに”幼馴染みごっこ”?」
「んー……、言い方がなんやアレですけど、まあそういうことですわ」

そう言って握っていた手を離すと、サブちゃんは頷いた。それから、なんだかきらきらした目をして私に問いかける。

「遠野さんとはどんな遊びしてはったんです?」
「えーっとね……、」

私は自分の子ども時代の記憶を辿り始めた。真っ先に思い出したのは、遊びの名前の先頭になんでもかんでも"処刑"をつけて喜んでいた幼馴染みの顔だった。処刑とはいうものの、内容は全然普通のかくれんぼやごっこで、”鬼に見つかったり、捕まったりしたら処刑”とかいう物騒な独自ルールがありはしたけど、「お前処刑な!」とか口で言うだけのものだった。
他にも、私がやりたがった人形遊びとか、おままごととかも(渋々)付き合ってくれたけど、圧倒的に前者の遊びの比率のほうが多かったよね……。
私はそれをサブちゃんに伝えた。事実をありのまま。

「”処刑かくれんぼ”とか、”処刑鬼ごっこ"とか」
「ハイ?」

私がそう言ったら、サブちゃんは”ちょっと意味がわかりません”という顔をした。もう一度同じことを繰り返そうと口を開いたら、サブちゃんは慌てたように手を振って、私が喋るのを遮った。

「もうなんも言わんでええです!! 今日は癒される動物動画いっぱい見ましょ!!」

そう絶叫して、もう半泣きになりながら私の肩を掴んでくるサブちゃん。これはたぶん間違いなく絶対に誤解されてるパターンだと思った私は、"このままにしておいたら後々面倒なことになりそう……!" と、その誤解を解くべく口を開く。
そしたらサブちゃんは「ええんですマキさん! もうなんも言わんでええんですよ! ”幼馴染み擬似体験”なんて言い出した俺がバカやったんです!! 」と首を横に振って、また私の言葉を遮ってしまう。
"こんな誤解されるんだったら、事実をそのまま伝えるんじゃなかった!" そう思ってももう後の祭りで、結局、タイミングをことごとく逃してしまい、サブちゃんのその誤解は解けないままになってしまっている……。


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