痛かったらごめんね

強引にあっくんのOKをもらった私は、さっそく現像した写真を彼の部屋へ持ち込んだ。それからその写真を床の上にばらまく。そんな私の行動を、あっくんはもう諦めきったような顔で見ていた。そしてぽつりとひと言。

「撮ったな」
「ざっと600はあると思う」

私がそう言うと、ああ、ね。と、抑揚のない声が返ってきた。床に座り込んで、試合別に写真の整理を始める。あっくんもすぐ隣に腰を下ろして、私が手に持っている写真を覗き込んできた。若干もたれ掛かるような体勢はやめてほしい。重い。と口に出したらきっとまた暴力を振るわれるので、黙って耐える。

「いや、絶対おかしいだろ」

今まで黙って写真を見ていたあっくんが、唐突に声をあげた。

「なにが?」
「なんで俺と君島の試合の写真はボールがセンターにあって俺らが見切れで、越知と毛利の試合は……、ボールどこいった? 人間しか映ってねえじゃん」

超ベストショットだな。私の隣で、床の上に散乱している写真のなかの1枚を手に取ったあっくんは、絶望したような声で呟く。

「そう! それ、よく撮れてるでしょ。将来カメラマンになろうかな」
「越知専属の?」
「あ、いいかもね」
「食ってけるワケねえだろ。専属なら種ヶ島にしとけ。そっちのがまだ稼げる」
「あー、修さんかあ……、なるほどね」
「君島って手もあるな」
「えー、それ絶対に嫌だ。だったら路上で行き倒れる」
「ちょい待ち。さっきの君島に聴かせてやるからもう1回言って」
「言わないですよ? 誰がそんな嫌がらせみたいなことしますか」

私がそう言ったら、あっくんはつまらなさそうな顔でスマホを持った手を下げた。でもすぐさま思い出したように、あ、そうそう。と若干ニヤニヤしながら言い出した。

「こないださぁ、君島のモミアゲがキモい、って言っただろ?」
「そんなこと言ってないよ! モミアゲがなければイケメンだ、って言ったの!」

私の脳内はあっくんの言う、このあいだ、を再生していた。確か、あっくんとキミさんの試合が終わったあとだったな。キミさんがどっか行った隙を見計らって言った言葉だった。

「もう半泣きだったぜ、君島」
「え?」

なんでだよ。なんでキミさん泣くんだよ。本人がいなかったから言ったんじゃんか。

「録音したの聴かせてやった」
「君さ、ペアなのになんてことしてるの。なんでペアの精神破壊しようとしてるの」

キミさんになにか恨みでもあるの? まあ、あのひと方々で恨み買ってそうなタイプに見えなくもないけど。だからって、私を使うのはやめてほしい。て言うか、精神破壊だったらツキさんがいるじゃん。

「今のでやっとわかった。最近、キミさんの私に対するテンションが低かったのはあんたのせいか」
「かえってよかっただろ? あのうざやかスマイル見なくて済んでんだから」
「それは、まあ…………、うん」

どうしよう反論できない。キミさんごめん。でも、あなたにモミアゲは要らないよ。

「大体、あいつ馴れ馴れしいんだよ……」

写真の整理に集中してて、あっくんがなにを言ったのかわからなかった。声も小さかったし。

「え?」
「なんでもねーよ」

あっくんは私が聞き返したのをスルーして、せっかく試合別にわけておいた写真をぜんぶごちゃ混ぜにした。
そして、お、俺写ってんのみっけー。とか、そんなことを呑気に言っているあっくんを、私は思いっきり突き飛ばしてやった。


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