外出許可が要るだの要らないだの、そんなことを言いながら部屋を出た私達の目の前にキミさんが立ちはだかった。いや、本人に進路を妨害しようという気は全くないと思うけど。そっか、部屋が隣なんだった。
私と目が合うと、キミさんはものすごく寂しそうな顔でふっと微笑んだ。今のキミさんは、そよ風でも吹き飛んでしまうんじゃないかと思う。その原因は、9割:遠野1割:私、なわけで。……うん、謝ろう。
「キミさん、ごめんなさい。私、キミさんのモミアゲが好きじゃないだけで、キミさん自体は好きだからね」
真剣にそう言った私の隣で、あっくんが盛大に吹き出した。真剣なのになんで笑うんだよ! せっかくの謝罪が台無しじゃん!
あっくんは言葉の節々に笑いを混ぜながら、お前どんだけモミアゲ嫌いなんだよ、と言った。そして笑いが治まってから、あー、俺髪長くてよかった。とも言った。キミさんはそのあいだ、遠い目をしながらあらぬ方向を見ていた。
「ちょっと、遠野くんが変なこと言うから……、謝りなよ」
「は? なんで俺? どっちかっつーとマキだろ」
「私は謝っただけじゃん! 遠野くんが笑うからでしょ」
「だって、お前、”モミアゲが好きじゃないだけ”って、意味わかんね……」
あっくんは、くつくつと笑いながらそう言った。ちらりとキミさんを見ると、案の定、もう泣きそうな顔をしていた。おい遠野土下座しろよ。
「ところで、お2人はこれからお出かけですか……?」
いいですね……。と、相変わらず遠い目で呟くキミさん。もう消え入りそうな声だった。私は反射的に隣のあっくんに肘鉄を喰らわせる。さっさと謝れ。という意味を込めて。そしたら隣から、なにすんだよ、って抗議の声が聞こえたけど、私がキミさんを指差して、つられてそっちを見たあっくんは、さすがに罪悪を感じたようだ。気まずすぎる沈黙が流れる。
「ええと……、これからアイス食べに行くんだけど、キミさんも行く? あ、遠野くんの奢りで」
耐え切れなくなった私は、とにかくこの沈黙をどうにかしようと、もう考え無しで口走っていた。そう言った途端に、キミさんの顔がぱっと輝く。あっくんが隣で、マジかよ。ってものすごく嫌そうに言ったのを、私は聞き逃さなかった。渋るあっくんを私が半ば強引に説得(脅迫とも言う)して、なぜだか一気にテンションが上がったキミさん(きっとアイスが好きなんだと思う)と、3人で出かけることになりましたとさ。