※一般人です

という感じで、半強制的に拉致された私は、たった今マネーキャッスルの正面玄関(っていうか門?)の前に、ギガさんと並んで立っている。しきりに後ろを振り返りながら。

「待ってても開けてくんなさそうだし、ブチ壊すか……」

顎に手を添えて、扉の上に設置されている小型カメラらしきものを眺めていたギガさんは、そんな犯罪臭漂う言葉を唐突に呟いた。普段なら止めているであろう私も、今はもうただOVERさんがいつハサミをぎらつかせながら現れるかと気が気じゃないせいで、その呟きに賛成の意を表した。

「あれ、なまえちゃんが止めないなんて珍しいじゃん?」
「いや、だって命の危機迫り来ちゃってますから……!!」
「ああ、OVERね。当分大丈夫でしょ、うまく撒いたし」
「で、でもあれ撒いたっていうか、ヘルキラーズの皆さんを生贄にしたっていうか……」

そう言いながら後ろを見ていると、手前で轟音が鳴り響く。何事?! と思って振り返ると、ギガさんがオブジェ真拳を使って扉をぶち壊したところだった。ハレクラニさんのお金に羽が生えて飛んでいくヴィジョンが脳裏に浮かぶ。まあ、あのひと金持ちだから平気だろ。

「そんじゃ行こうぜ!」

意気揚々と宣言して、私の手を掴んで歩き出すギガさん。もう一度だけ後ろを振り返ると、何かが爆発でもしたのか、黒煙がたなびいているのが目に入った。どうかヘルキラーズの皆さんがしんでたりしませんように。そう祈りながら、私はギガさんに手を引かれながら歩き始める。


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私とギガさんの前には、高そうな茶器に注がれた高そうな紅茶、高そうなお茶菓子。それから、優雅な顔をこれでもかと歪めてギガさんを睨む、あの司令ポーズをとったハレクラニさんが座っている。扉を破壊したのがギガさんとはいえ、それに賛同してしまった私にも、命がかかっていたとはいえ多少なりとも非はある。
すみませんでした……!とテーブルにぶつけるんじゃないかというくらいまで頭を下げた。 そんな私とは裏腹に、ギガさんは呑気に紅茶なんか啜って完全にくつろいでいる。
ハレクラニさんが盛大にため息をつくのが聞こえた。

「なまえ、お前が謝る必要はない。ギガ、お前、まさかとは思うが融資の件か?」
「さっすがハレちゃん、察しが良いじゃん。実は、こないだ借りた金じゃ、まだちょっと足りなくてさー」

ギガさんがそう言った途端、ハレクラニさんの顔が、さっきまでの歪んだ顔から一変、放心したかのようになんの感情も読み取れない顔になる。でもそれも一瞬で、また元の、いや、それよりももっとひどい顔になった。鬼の形相っていうのはきっとこの顔のことだな。出してもらった紅茶を啜りながら震えた。

「貴様、あれだけ貸してやって、まだ足りないだと……!?」
「いやあ、大方は借りた金で済んだんだけど、仕上げに回す分が足りなくなったんだよねー」

ものすごい痛い沈黙のあと、開くのを拒否する口を無理やりこじ開けるような感じで、ハレクラニさんは口を開いた。

「…………いくらだ」

その言葉にギガさんは、してやったり!とでもいうみたいに目をらんらんと輝かせる。
なんかもう、ハレクラニさんはギガさんに弱みを握られているんだ。とか言われても納得出来るレベルだ。ていうか、実際そうなんじゃあ……。

「そーだなあ、この前の4分の1もあれば足りるじゃん」
「……わかった。都合がつき次第、貴様の口座に振り込んでやる」
「心配すんなって。借りた金はちゃんと返すからさ」
「そうでなければ今頃貴様がここで呑気に座っていられると思うか?」

これは前にギガさんから聞いた話だけど、ハレクラニさんの借金取り立てテクはもう尋常じゃないらしい。
有り得ないくらいの高額のお金を貸してくれる代わりに、その利子率は化け物級。もはや犯罪だろと100人中100人が口をそろえるレベル。期限までに返済しないと、社会的に抹殺。残された道は樹海で探しましょう。みたいなことになりかねないんだと、ギガさんはニヤニヤとひとの悪い笑みを浮かべながら話してくれた。

「そんなことより、何故なまえまで連れてきた」

私に目を向けながら、ハレクラニさんはギガさんに尋ねる。若干トゲの感じられる口調だったのはきっと気のせいじゃない。やっぱり扉のこと怒ってるんだろうな、と1円玉になった自分を想像しながら考えた。待って、私しぬね?

「OVERにストーカーされてたから連れて来ちゃったんだよねー。ハレちゃん直々にお迎えに上がりたかったのに悪いことしたじゃん」
「え、お迎えにって……、え?」
「驚いたなギガ、貴様がそんなに1円玉になりたかったとは……」

ハレクラニさんはそう言いながらゆっくりと席を立った。ギガさんを見ると、例のニヤニヤ笑いを浮かべながら余裕そうに腕を組んでいる。いやあなた1円玉にされますよ!?

「相変わらず素直じゃないねえ。ハレちゃんは」
「うるさい黙れ消すぞ」
「そうやってムキになるもんだから、余計にからかいたくなるんじゃん」
「貴様……!!」

ちょっとちょっとちょっと!? なんなのこの一触即発な雰囲気!?
ギガさんももう椅子から立ってるし、なんかこれからバトル始まりますよ的な雰囲気じゃんかよ!!

「丁度いい。どっちが上か、ここらでハッキリ白黒つけようぜ」
「あとで泣きを見るのは貴様だぞ、ギガ」

待って、今、ここで!? いやあの一般人いるんですけど!! まだ避難してないんですけど!?
どうしようどうしようとめちゃくちゃ焦りながら、2人の顔を交互に見る。ハレクラニさんはブチ切れ寸前って顔、ギガさんはもう超余裕って顔。…………私、確実に神に嫌われてるやん。

「ゴージャス真拳!!」
「オブジェ真拳!!」

2人がお互いに真拳の名前を叫んだ。ああ、私このなんかよくわからないうちに勃発したケンカに巻き込まれてしぬのね。と、これからの人生すべてを諦めたとき、突然轟音が響いた。


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