「おふざけは許さなーーい!!」
の声と共に、目の前にいたギガさんとハレクラニさんが吹っ飛ばされた。おそらく壁にぶつかったと思われる音が聞こえる。またお金の飛んでいくヴィジョン。ていうか、2人とも平気だろうか……。
粉塵が晴れると、彼らがもといた場所には魚雷さんが立っていた。OVERさんじゃなくてよかった!!
「ふう、先生なんとか間に合ったみたいね」
額(が魚雷にあればそのあたりだろうって場所)の汗をぬぐった魚雷さんは、いつの間にやらシンデレラ的な衣装に早着替えしている。待ってあの2人超理不尽!!
「さあなまえ! 今度こそ第1857回社交ダンス大会で優勝をかっさらうのよ!!」
「社交ダンス?! 1857回?!」
あれシンデレラは?!
これはこれでやばいぞ。と思い始めた矢先、バタバタと大人数が走ってくるような音が聞こえた。
「ギガ、ハレクラニ!! 貴様らまた性懲りもなくなまえをーー!!」
「攫うヤツ間違ってんじゃないわよ!! ヒロインはアタシよーー!!」
「うおおおおおお!! 金金金金ーー!!」
「なまえさん無事ですか!?」
「首領パッチくんと天の助くんは真面目にやって!!」
口々に叫びながら、マネーキャッスルに突っ込んできたのは、序盤で解散したボーボボ一行。よかった、私まだ神様に見放されたわけじゃなかった……!!と小さくガッツポーズを決める。
「あんたたち全員遅刻よーー!!」
一行に突っ込んでいく魚雷さん。ボウリングのピンよろしく吹っ飛ぶ面々(ビュティちゃん以外)。魚雷さんはそのまま、ソフトン様捜しの旅へ行ってしまった。これで当分OVERさんの危機は去った。私は安堵のため息をついて胸をなでおろす。
そんな私のもとにビュティちゃんが走り寄ってきて、大丈夫かと聞いてくれた。
「危うくしぬとこだったけど、なんとか大丈夫」
乾いた声で笑いながら、右手の親指を立てる。ほんとに人生諦めかけたけど。
「なまえさんの姿が見当たらないって捜し始めたんだけど、途中でOVERさんに鉢合わせて、なまえさん拉致されたっていうから、心配で……」
でも、無事でよかった! と笑顔になるビュティちゃん。どうしようただの天使だ。
「ごめんね、心配かけちゃって。……OVERさん魚雷さんになったんだね」
「あ、うん……。天の助くんが……」
ビュティちゃんは頷いて、視線を横に流した。きっとあの黒煙はボーボボさん一行だったんだろうな。と思いながら、気の抜けた声で笑う。私は心の中だけで天の助さんに感謝しておいた。
「マジかよ、タイミング最悪じゃん?」
「貴様ら、私のマネーキャッスルを……!!」
瓦礫の中から、最初に魚雷さんに吹っ飛ばされた2人が姿を現す。漆喰の欠片を髪にたくさんつけて、ところどころ出血がみられるけど、命に関わるようなケガは負っていないみたいで安心した。でもハレクラニさん不憫すぎる……!!
「ギガ、ハレクラニ、なまえを拉致った罪で貴様らを再起不能にする!!」
「ちょ、ちょ、だめですよ再起不能なんて!! お願いだからやめてください!!」
ボーボボさんが言うと冗談に聞こえないよ、いや冗談じゃないんだろうけど!! っていうかあなたそれを実現できそうで怖いんだよ!!
私を拉致ったことなんかノーカンでいいですから!!
「なまえがそう言うなら仕方ない……。真剣で百叩きの刑に減刑してやろう」
「いやいやいやそれさっきより重くなってるよ?!」
ボーボボさんのさらっと人殺し発言に、ビュティちゃんがツッコミを入れる。ボーボボさんテヘー! とか言って舌出してるけど、いやほんと笑えんから。マジで。とか思った瞬間、ボーボボさんは侍の格好で真剣を携えていた。
あれ、テヘー!じゃなかったの?!
「さあ、先にこの妖刀”エクスカリバー”の餌食になるのはどっちだ?」
「日本刀なのにカタカナなの?!」
「ていうかそれ刃の部分におもいっきり”村正”って書いてあるんですけど!?」
小学生みたいな下手くそな字で、っていうか小学生が書いたんじゃないの? だって村の点ないし!
首領パッチさんと天の助さんは、あの伝説の妖刀か……!! とか騒ぎ出す始末。そしてあろうことか、刀と記念撮影を始めた。いつの間にか刀には手足が生えて、自我も芽生えたみたいだ。こんなのもう日常茶飯事だし、驚かないけど。
私は、ギガさんとハレクラニさんがまた理不尽な目にあわないよう、どこかに避難したほうがいいと伝えようと後ろを振り返る。
ハレクラニさんは髪についた漆喰をなにやらぶつぶつ言いながら払っているところで、ギガさんは服の汚れを払い終わって、ちょうど顔をあげたところだった。
私が、「もうなんかやばそうなんで逃げてください」を、拙いジェスチャーで伝えたら、ギガさんは、「オレもそう思った。ハレちゃんにも言っとく」みたいな内容を超うまいジェスチャーで返してくる。それからギガさんは、私に伝えた通り、隣のハレクラニさんに話しかけた。まあ、これであの人たちは理不尽な暴力の犠牲にならずに済むだろう。と胸を撫で下ろす。
刀と記念撮影会は、いつの間にか、刀VS.3バカの修羅場になっていた。いや驚かないけど。
私とビュティちゃんとへっくんは、無表情でそのアホみたいな戦いを傍観している。
「んじゃ、今日は退いてやるじゃん。なまえちゃん、またあとで連絡するね〜!」
聞こえた声に後ろを振り向くと、ギガさんがいちばん近くにあった窓をぶち割り、私に向かって手を振って出て行くところだった。
眉間を押さえて何度も首を振る、超理不尽な仕打ちをされたハレクラニさんを置き去りにして。