「え、シイラのやつ、なにそれ?」
おれの向かいに座るシイラの前には、パッと見はおかゆのような、でもそれよりはどこか茶色っぽい物体が深めの皿に入って置かれている。
「オートミール」
ちょっとごはんに飽きちゃったから。と苦笑するシイラ。
「へー、美味いの?」
「うーん……、不味くはないと思う。わたしはすき」
ええ?!なにそのめっちゃ引っかかる言い方!!暗に”世間一般的には美味くない”って意味じゃん!!と心の中でツッコミを入れたおれは、へーそうなんだ。と表面上は当たり障りのない返事をする。
シイラは持っていたスプーンでオートミールとやらをすくって、口に運んだ。不味そうな感じではまったくない。そりゃそうか。白米に飽きたからって、自分が不味いと思うようなもんわざわざ食わないよな。なんて思いながらシイラを見ていると、キャプテンが空いていたシイラの隣の椅子に腰掛けた。もっと正確に言うと、”キャプテンのために空けられていた”シイラの隣の椅子、だ。ベポ以外がシイラの隣に座ると、即刻シャンブルズで入れ替えられる。ちなみにおれはもう99回経験済みだ。
相変わらず淀みなくオートミールを食べ続けるシイラ。の横で、頬杖をつきながらそれを眺めていたキャプテンが、シイラに少し顔を寄せて無言で口を開ける。気づいたシイラは、気に入らないかもしれないですよ、と言いながらごくごく自然な動作で、自分の皿から中身をすくって、キャプテンの口へと運んだ。咀嚼して顔をしかめたキャプテンがひとこと。
「不味い」
だから言ったのに。シイラは朗らかに笑って、今度はすくったオートミールを自分の口へと運ぶ。流れるような間接キス。あまりに自然すぎて、今行われた行為が当たり前みたいな錯覚に陥る。え、錯覚だよな? おれは目を瞬いた。
じっと見られていることに気づいたシイラが、おかしそうに笑いながら首を傾げる。
「シャチも食べてみる?」
そう言いながら、シイラはキャプテンにしたのと同じようにオートミールを皿からすくっておれに差し出す。微笑みながら首を傾げるシイラに後光が差している。なんだ女神か。
じゃあ遠慮なく、なんて言いながら、差し出されたスプーンに口をつけようとした、そのとき、
「シャンブルズ」
一瞬にしておれとキャプテンの位置が入れ替わる。記念すべき100回目だ。そして間髪入れずに101回目。
さっき不味いって言ってたのに。と笑うシイラ。自分を凝視するおれのことなんか知らん顔で、さっき不味いと言ったオートミールを咀嚼するキャプテン。
いやいやいや、ガキかよあんた。