わたしね、くらげになりたかったの。ふよふよと水の中に浮かぶ、半透明の物体を見つめながら、なまえはぽつりと呟いた。
「知ってる? くらげにはね、心臓がないんだって」
その心臓のない生き物から目をおれに向けて微笑む彼女は、全然くらげっぽくなんかないし、どっちかって言うネコに似てると思うのに。
心臓がないんだって、また視線をくらげに戻しながら、なまえの口は二回目の呟きをこぼす。その言葉の意図を計り知れないし、計り知りたくもないおれは、へえ、とだけ返事をして、隣に立つなまえの白くて細い、今にも向こう側が透けて見えそうな手を少しだけ強く握る。
それに気付いたなまえはおれを見て、それはそれはきれいに微笑んだ。