呼ばれた声に振り返ると、クラスは違うが同じ選択教科をとっているなまえが、なんだか呆気にとられたような顔で立っている。また「遠野くん」と言った後、あいつは急に吹き出した。わけがわからずに片方の眉を吊り上げると、まだ笑いの余韻を引きずっているなまえは、顔の前で両手を合わせる。
「笑ってごめん。後ろの髪、1束だけ三つ編みになってたから」
「は?」
「ちょっと待ってて、ほどいたげる」
突然の報告に目を瞬かせる俺に笑いかけると、なまえは軽い足取りで歩いてきて背中に回った。それから「誰だろうね、こんなことするの」と笑いを含んだ声で呟きながら、俺の髪を解き始める。
「はい、いいよ。ていうか、遠野くんの髪ほんとにサラサラ。うらやましい」
そう言って微笑んだなまえは「次移動だから行くね」と、俺に手を振って歩いて行ってしまった。俺の髪にかすかな体温だけを残して。