そういう愛のカタチ


「左馬刻」
「あー?」
「これ何」
「何って何が」
「この箱の山」
「んなもん見りゃ分かんだろ。靴だよ靴」
「そうじゃなくて、何でこんなにいっぱいあるの」


先日、割と重宝していたお気に入りの一足が壊れたと何気なく話したことはあったが、わたしが話したのは本当にただそれだけだったはずだ。新しい物ーーーましてこんなにたくさんの靴が欲しいなど、一言も言った覚えはないのだが。何故なのだろう。仕事終わりに荷物を置こうと自室の扉を開ければ、そこには大量に積み上げられたたくさんの新品と思わしき靴たちが。


「お前この間壊れたっつってたろ」
「だからってあんなに新しい物貰ってもどうしろっていうの」
「いや履けよ」
「そうじゃなくて、!」


もう、とイマイチ意図が伝わらない会話に疲れを感じて溜め息を吐いた。

そりゃわたしだって彼が良かれと思ってしてくれたということには感謝している。靴も、貰って嬉しくないわけじゃないし、むしろその気持ちはとても嬉しい。
ただやり方が豪快すぎるのだ。何もこんなに数を揃えてブランド物を用意してくれなくても、わたしはそこら辺にあるお店のそこそこの物を一つでも彼と一緒に選んで買えればそれでいいというのに。


「無駄遣いばっかり、」
「あ?テメェの女の為に贈ったもんが無駄遣いなわけねーだろ」
「それは嬉しいけど、だったら次はもう少し量を減らして」
「おー 覚えてたらな」
「そうしてくれないとわたしの部屋いい加減物置けないんだからね」


左馬刻のこういった買い物癖は靴だけではない。服やアクセサリー、香水や化粧品に至るまで、少しでも良いと思えばすぐに購入してわたしへプレゼントしてくれるのだが、たまになら嬉しいであろうそれもこうも数を重ねるとある一種の悩みの種と言っても過言ではない。
大前提として、もちろん嬉しい気持ちはある。しかし、とにかくその頻度と量が多過ぎるのだ。


「ハッ、わがままなお嬢さんだな」
「左馬刻が限度を知らなすぎるんでしょ」
「俺はお前にやりたくてやってんだから別にこれで良いんだよ」
「もう、ほんと王様!」
「おー 知ってる」


部屋から持ち出したたくさんの箱の中身を確認しながら、仕事に使えそうな物、プライベートでオシャレした時に使う物と、それぞれの用途に合わせて仕舞うところを考えている辺り、わたしもすっかりこの王様のやり方に毒されてしまっているような気がしてならないが、今さら何を言ったところでそれがどう変わるわけでもないのは分かっている。ならばこれ以上の口出しは無意味だと大人しく広げた靴を吟味しながらそばにいた彼の方へと視線を移した。


「左馬刻」
「あ?」
「ありがとう」


少し癪だが、次のデートにはさっそくこの中から選んだ一足を履いて彼の隣を歩こう。
そうすればきっと、彼はまたいつものように優しく笑って褒めてくれるはずだ。


「好きなだけ使えよ」
「じゃあデートしてほしいな。久しぶりにドライブでも行かない?」
「いつ」
「今週末」
「仕方ねーからあけといてやるよ」
「うん、ありがとう」


言葉の割に合わない優しげな表情でこちらへ伸びてきた手を掴んで、そのままそれを逃すまいと自らの手で包み込んだ。


「ふふ、大好き」
「……そーかよ」


いつも余裕そうにふんと鼻を鳴らす彼の顔は、少しだけ赤く染まっていた。

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