どういうこと
* * *
「ね〜 #name1#ちゃんは〜?誰か俺の#name1#ちゃん知らない?どこにもいないんだけど」
「#name1#さん?」
「あぁ、そういえば…」
「確かにいねーな」
夕飯後、いつもなら食事を終えたタイミングで誰かしらと談話室にいるはずの#name1#ちゃんの姿がなかった。
「LIMEしたんだけど既読すら付かないんだよね」
「じゃあ寮のどこかにはいるっしょ」
「それがいないんだって」
「んなまさか」
「そのまさかだからこんなに騒いでんの」
イマイチ危機感の無い万里を始め、その周りにいた学生組数人も大して気にはしていないようだ。
むしろその過半数に至っては、また始まった的な目で俺を見ているからたまったもんじゃない。いくら俺だって、たかが数分彼女がいなくなったくらいでここまで騒ぐほど馬鹿ではないというのに。
「でもそういえば、#name1#さんの姿結構見てないような気がします」
「ねぇ、ほら聞いた?ちょっと、みんな咲也がこう言ってるんだけど」
「公演期間中だしな。劇場の方は探したのか?」
「あとは倉庫とか」
「いっそ清々しいほどの咲也と俺の扱いの差」
先ほど同じこと言った俺に対しては見向きもしなかったくせに。咲也が言うなり次々と協力的な姿勢を見せる談話室の面々に思わず膨れ面を浮かべたところで、ピコンピコンと、ジャージのポケットに入れていたスマホが何かの通知を知らせていた。
それを見て一瞬彼女からの連絡かと期待したが、すぐに冷静になって思い出す。彼女からの通知は彼女専用の音故にこれは今何よりも求めている#name1#ちゃんからの連絡ではない。
「も〜…どこ行ったんだよ#name1#ちゃん、」
未だ行方の分からない彼女に届くはずのない声を上げたところで、ロックを解除したスマホの画面を覗き込む。
どうやら先ほどの通知はメールのようだ。凄く嫌な予感がする。このタイミングで弊社からの連絡だったらどうしよ、しばらくは見なかったことにしよう、と呑気に考えながら新たに1と表示されているそのアイコンをタップすると、表示されていたのは見たこともないメールアドレス。一瞬迷惑メールかとも思ったが、内容は添付ファイル一件と表示されており、本文もない。疑惑が完全に晴れた訳ではないが、おそらくこれだけで架空請求の類いが来ることもないだろうと、興味本位でそのファイルを開いた瞬間だった。
「………は、…」
思わず、持っていたスマホを開いたまま自分でも驚くほどの低い声を出してしまう。
「至さん?」
「どうしたんすか」
「……」
「いたるん?」
「あれ?死んだ?」
黙ったままジッとスマホを見つめて微動だにしない俺を不思議そうに見つめている面々には申し訳ないが、正直今そんなことに構っていられるほどの余裕が俺にはなかった。
「ごめんちょっと部屋籠るわ」
「えぇ!?」
「どうしたのいたるん!」
「#name1#ちゃんはいいの?」
「全然良くない」
「…?」
暗転させたスマホを握って、なんだなんだと俺の様子を伺うみんなに、一言だけそう告げて談話室を後にした。
全然良くない。そう、全く良くないのだ。
「……んなんだよこれ、」
添付されていた写真は、今の今まで必死に探していた大切な彼女のもの。
しかし、その彼女がどうしてこんな意味の分からない写真に写っているのだ。
シルクの綺麗なベッドの上。仰向けに寝転がる彼女は気持ち良さそうに眠っているのが分かるが、その格好が下着一枚なのがどうしても気になる。幸い、写っているのは彼女の上半身のみだ。お腹あたりから下は毛布が被せられていて状況はよく分からない。
しかし、そんなことよりも何より俺が一番嫌なのはこのわずかに写り込む手だ。大好きな彼女の、大好きな髪に触れるこの手はいったい誰のものなんだと、考えるだけで気が変になりそうだった。
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