第三話

「ようやく正式に巫女祭に参加できるー!」

 兄の喜びように、思わず笑いが込み上げる。兄は今まで一度も巫女祭に参加できなかったのだ。

 何故か?理由は単純。毎年その日に風邪で寝込むか、誕生石をもってくるのを忘れるのだ。
とことん運のない人だな、と毎年思っていたのだが、今年こそはと兄も気合を入れたのか、一週間前から誕生石をはめ込んだネックレスを肌身離さずつけていたのを知ったときは流石に笑った。

「だっておかしいと思わない?毎年だなんてさあ」

 そんな自分を見て兄はぷくうを頬を膨らませる。大の大人なのに。

「でもよかったですね。今年は何もなくて」
「ねー!やっぱいつも寝る前にお願いしてたおかげかな」

 それを聞いて、つい顔が綻ぶ。

「あ……あー!今笑ったね!?」
「だって、ずっとつけていただけじゃなくお願いまでしていたなんて……ふ、そんなに行きたかったんですね、ふふ」


街を行き交う子供たちの手には、可愛らしい風船が握られていた。

「はぐれないでくださいね、兄さん」

中心へ進むほど人込みは増していく。そこで今日の儀式が行われるからだ。

兄は、いわゆる方向音痴というやつで、自分が見ていないとすぐ姿が見えなくなってしまう。
だからこうして外に出る時は自分が常にそばにいるか、はぐれても平気なようにあるものを持たせている。

「だーいじょうぶ大丈夫。そんなにすぐ離れないよ。案内石≠烽るんだし」

 案内石=Bその名の通り道案内をしてくれる石。行きたい方向へ一筋の光が伸びる。



中央のアーチが見えてきた。“ミッテ・ガルド”と書かれている。

「ほら、見えてきまし??」

ふりかえると兄の姿はどこにもいなかった。
やってしまった……この人混みのなかではぐれてしまったようだ。

まあ、お互い目指す場所は変わらないしじき会えるだろう。
……念のために案内石を持たせておいてよかった。

儀式が始まるまでまだ少し時間がある。
兄を探すとともに、少し街の中を歩こう