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次の日から早速参考書を貰い、この世界の社会や歴史を中心に受験勉強を始めた。

非現実的な内容は漫画を読んでいる気分になりながらも、時々相澤さんに質問しながら進める。

勉強の方は、予め知識があったおかげで順調に進み、生前、勉強をしていて良かったと心底思った。




個性の方はというと、家電製品の開発部に属していた俺は、空気清浄機やコンプレッサーなどの知識を応用して、個性の使い方を伸ばすことに成功しつつあった。

あの会社はブラック企業だったが、今だけは感謝の念を送ろうと思う。







ーーーあれから約1ヶ月。


俺は相澤さんに個性の使い方を見てもらっていた。
思い描いている使い方は、流石に実践してみないと分からないと伝えれば、雄英高校の訓練施設に連れて来てくれたのだ。

彼はここの教師らしい。入学できれば、本格的に彼の授業を受けられるのだろうかと、少し夢も広がった。


「相澤さん、見てください」


「………」


「俺、空中歩けるみたいです」


昔読んでいた某忍者漫画を参考に、足の裏に空気の層を作り、空中を歩くことにも成功した。

凄くないですかと室内を歩き回る俺を見て、相澤さんはカッと目を見開く。


途端に足の裏から感覚がなくなり、床に叩きつけられる。


「ぁだッ!……っ、酷い…鬼だ…」


「ちょろちょろ動き回るな」


「……少しくらい、褒めてくれてもいいと思うんだけどなぁ…」


ポツリと本音を漏らすも、彼は褒めるような人ではないかと自己完結し、身体を起こす。


なんだかんだ彼とはうまくやっているように思える。

俺は必要以上に関わらないし、彼もそういう性格だからだ。たまに冗談を言える上司と部下のような立ち位置は、案外心地よかった。


そんな上司いなかったしなぁと思いながら、手に空気を纏う。

圧縮して固くした空気圧の拳で、近くの岩を殴ってみると、岩は見事に粉砕された。
粉砕され飛び散った瓦礫は、圧縮された空気の層を作り防ぐ。


「…圧縮は、攻撃にも防御にも使える…っと」


思い描いている使い方を試しては、その都度研究ノートに書き込んだ。


分かったことといえば、俺は風を生み出せる訳では無いことだ。病院で暴走した時は、窓が割れて風が吹き込んだため、その風を纏うように増幅させたのだと考えられる。

風が吹けば、その風に乗ることは可能かもしれないし、上手く行けば操れるようになるかもしれない。



ーーー個性の研究。


社畜になる前は、開発部で楽しく研究をしたいと思っていたことを思い出す。

今こうして自分のやりたかったことが、形は違えど行えているのは、守形くんや相澤さんのおかげだなと、眉を下げ口角を上げる。



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mokuzi