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一通り思い描いていた使い方を試せば、流石に息苦しくなってきた。
個性を使いすぎると“酸素欠乏症”になるらしく、倒れる前に切り上げることにした俺は、ノートを手に取り相澤さんの方へと向かった。
「どうした。まだ時間じゃないよ」
「酸欠になって倒れる前に切り上げようかと…明日からトレーニングには、低酸素運動も取り入れてみます」
「そうか、なら今やろう」
えっと声を上げるのも束の間、顔面スレスレに相澤さんの捕縛布が飛んでくる。反射的に避けた俺は、ギリギリ捕らわれずに済んだ。
「ッな、何するんですか…!」
「時間は有限。いい機会だから戦闘訓練もしようか」
「待っ、マジッ、か!!!」
振り被られた拳を“空気層”で受け止める。まだ咄嗟の強度が足りないのか、びりびりと空気が震え、そのまま殴られる。
岩に叩きつけられた俺は、息が詰まり噎せ返りながら、痛む身体を起こす。目の前に空気層を作ろうとするが、相澤さんは待ってはくれない。
「遅い」
「ぐっ…ッ、ごほっ…っは…」
「圧が弱い。もっと集中しろ」
「言われ…無くてもッ…!」
ギリギリのところで作ったものの強度が足りず、また破られる。また殴られまいと落ちてきた拳を避け、ぐっと地面についた手に力を込めれば、圧縮した空気を放ち、その場から飛び退く。
不思議と身体は動いた。恐らく、守形くんの身体能力なのだろう。
付き添いの父親が言っていたという“ヒーローになるための特訓”は、あながち間違いではなさそうだ。
「お前、スポーツか何かしてたのか」
「守形くんのッ、身体能力かと…!」
「…成程」
恐らく相澤さんも俺と同じことを思っている。そこからは容赦なく攻撃され、防御という名の反撃もそこそこに、攻防戦が繰り広げられた。
「Hey!!!!イレイザー!お楽しみのところわりぃが時間だぜーー!!!」
「痛ッ、っ…うッるさ、」
「…終わるぞ」
急に空気が震え、咄嗟に耳を抑える。突然現れた騒音の主を見れば、相澤さんの攻撃の手も止んだ。
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