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大声で叫ぶ金髪の男がこちらに向かってきた。岩に叩きつけられた背中が痛むが、埃を払いながら立ち上がる。骨折れてないといいけど…
「…相澤さん、背中が痛いし、フラフラします」
「いい訓練になっただろ」
「こいつあシヴィー!その子素人だろ!?手加減してやれよ!つーかこの子が噂のイレイザーの隠し子か!!」
マシンガントークを繰り広げる男は、軽薄に相澤さんに絡んでいく。諸事情で預かってるだけだと相澤さんが言えば、つまんねぇなと返す金髪の男。
ーーーあれ?この人もしかして…
「…プレゼント・マイク、ですか?」
「YEAHッ!!いかにも!君、もしかして俺のリスナーか!?」
「相澤さん、勉強の成果出てますよ」
「コイツは勉強しなくても分かる」
「無視かー!!!!!」
広い室内にプレゼント・マイクの声がこれでもかというくらい反響する。テンションがとてつもなく高い彼に、俺は内心溜息をついた。自分とは違うジャンルの人間と絡むことに慣れていない俺は、ちらりと隣を見る。
相澤さんは心底どうでも良さそうな顔をして、行くぞと俺を促し歩いていく。ああ、やはり彼は俺と似ている部類なのだと、少し安心した。
「え!?マジで無視!?ちょ、イレイザーそりゃねぇぜ!!飯行くっつったろ!!?」
「行くとは言ってねぇ」
「あ、相澤さん。ゼリー飲料、そろそろなくなりますよ。やっぱり二人じゃ減り早いですよね、すみません」
「衣食住は確保するって言っただろ。そこは気にしなくていいよ。あいつも気にしなくていい」
「待て待て待て待てイレイザー!!!Wait!!!」
マイクが勢いよく振り返り、相澤さんの肩を掴む。つんのめる様に動きを止めた彼は、面倒くさそうな表情で後ろにゆっくりと振り返る。
マイクは慌てた様子で俺を指差し、今までよりかは格段に落ち着いた声色で相澤さんへ言葉を投げかけた。
「お前、この子にゼリー飲料食わせてんのか」
「たまに飯は食う。パンとか」
「は〜〜〜!!??イレイザーそれはダメだろ〜!!!ナンセンス!!!!」
この子成長期よ!?と俺の肩を掴み、前後に揺らしてきた。ちょっと酸欠状態でそれはやめていただきたい。本当にやめてほしい。
マイクは何か問題があるのかと訴えてくる相澤さんでは埒が明かないと、俺に向かって言葉を投げかけてきた。
「風間くんだったよな!?この通りあいつは生活感が全くねぇ!そこで君の出番だ!!飯作れる!?」
「ぅえっ、う、はい、つ、作れます」
「女子力ゥ!!!じゃあ早速、手料理頼むぜ!!!」
肩に腕を回され、強引に引き寄せられる。既に体力の限界だった俺は、そのままマイクに引き摺られるようにして連れ去られる。
「イレイザーんとこに厄介になるなら、あいつの生活習慣を何とかしてやってくれねぇか?心の友がこのまま小汚いおっさんになるのは見てらんねぇ!」
「小汚くねぇ、合理的だろ」
「その…恩を仇で返すようなことはしたくないので、俺でよければ作りますよ」
「YEAH!!話が早くて助かるぜ!」
上機嫌になった彼は、俺を抱えて走り出した。抱えられた状態で相澤さんを見れば、特に怒っている様子はなく、この二人はこういう関係なのだと理解することに時間は掛からなかった。
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