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爆破を受けた俺は、地面を転がり、壁に打ち付けられた。

一瞬、呼吸が止まる。


「ッ、…う゛…ッ」


呼吸がしずらい。まだそんなに個性を使っていないはずなのに、何故こんなにも酸欠状態なのか、自分ではわからなかった。


「さっきまでの勢いはどうしたぁ!?」

「は…ぁ…ッ、なん、で…酸素…」


酸素が上手く取り込めない。相澤さんに「空気清浄機みたいでしょ」と遊んでいたやり方を試しても、どんどん息苦しくなるだけだった。


相手の攻撃をギリギリ交わす。その間にも頭は重くなるばかりで、酸素が行き届いていないことが分かる。

取り込まれている少年、カツキくんが何かを訴える目でこちらを見てきた。彼はプライドが高いのだろうか、彼の“個性”を見ていてもなんとなく分か…


ーーーあ…これは、一酸化炭素中毒か


爆破により一酸化炭素が発生され、ここ一帯が火事現場のようになっているのだ。それに埃や煙を相俟って、空気が汚染されている。


初めて自分の“個性”のデメリットが証明された。それに気づいたのは、既に意識が朦朧としている時だった。


デメリットに早く気づいていれば、もっと鍛錬していれば、気を抜かなければ…


「大丈ー夫。身体を乗っ取るだけさ…苦しいのは約45秒」

「ぐぁッ…ッ、は…ク、ソ……っ」


彼の爆破を受け、グラリと身体が傾く。頭の中でガンガンと鳴り響く危険信号に、身体がついて行かない。

一瞬の隙を見て、ヘドロは俺の身体にまとわりついた。ドロドロとした流動体が服の中を弄り、身体を飲み込む。


「捕まえたぁ」

「ん゛ッ、ンぐッ」


身体を走る気持ち悪さと、むせ返るような息苦しさ。息ができず、身体の力が抜けていく。


『こんなドブ男にぃい!!俺が呑まれるかぁぁあああ!!』


不意に聞こえた声。カツキくんが抵抗を続けているようだった。俺はギリギリ保っている朦朧とした意識では、彼のように抵抗はできず、されるがままになる。


「……ッ…」


ーーー相澤、さん…ごめん、なさい


彼に迷惑がかかるかもしれない。薄れゆく意識の中、彼の顔が頭に浮かんだ。



ヘドロ野郎はまだ抵抗を見せるカツキくんを連れて、人が密集する大通りへと向かった。










mokuzi