20
爆破を受けた俺は、地面を転がり、壁に打ち付けられた。
一瞬、呼吸が止まる。
「ッ、…う゛…ッ」
呼吸がしずらい。まだそんなに個性を使っていないはずなのに、何故こんなにも酸欠状態なのか、自分ではわからなかった。
「さっきまでの勢いはどうしたぁ!?」
「は…ぁ…ッ、なん、で…酸素…」
酸素が上手く取り込めない。相澤さんに「空気清浄機みたいでしょ」と遊んでいたやり方を試しても、どんどん息苦しくなるだけだった。
相手の攻撃をギリギリ交わす。その間にも頭は重くなるばかりで、酸素が行き届いていないことが分かる。
取り込まれている少年、カツキくんが何かを訴える目でこちらを見てきた。彼はプライドが高いのだろうか、彼の“個性”を見ていてもなんとなく分か…
ーーーあ…これは、一酸化炭素中毒か
爆破により一酸化炭素が発生され、ここ一帯が火事現場のようになっているのだ。それに埃や煙を相俟って、空気が汚染されている。
初めて自分の“個性”のデメリットが証明された。それに気づいたのは、既に意識が朦朧としている時だった。
デメリットに早く気づいていれば、もっと鍛錬していれば、気を抜かなければ…
「大丈ー夫。身体を乗っ取るだけさ…苦しいのは約45秒」
「ぐぁッ…ッ、は…ク、ソ……っ」
彼の爆破を受け、グラリと身体が傾く。頭の中でガンガンと鳴り響く危険信号に、身体がついて行かない。
一瞬の隙を見て、ヘドロは俺の身体にまとわりついた。ドロドロとした流動体が服の中を弄り、身体を飲み込む。
「捕まえたぁ」
「ん゛ッ、ンぐッ」
身体を走る気持ち悪さと、むせ返るような息苦しさ。息ができず、身体の力が抜けていく。
『こんなドブ男にぃい!!俺が呑まれるかぁぁあああ!!』
不意に聞こえた声。カツキくんが抵抗を続けているようだった。俺はギリギリ保っている朦朧とした意識では、彼のように抵抗はできず、されるがままになる。
「……ッ…」
ーーー相澤、さん…ごめん、なさい
彼に迷惑がかかるかもしれない。薄れゆく意識の中、彼の顔が頭に浮かんだ。
ヘドロ野郎はまだ抵抗を見せるカツキくんを連れて、人が密集する大通りへと向かった。
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