22


ギリギリに保たれていたカツキくんの意識が飛び退こうとする。ヘドロ野郎は少年に向かって腕を伸ばした。


「やめっ…ろ…!」

「もう少しなんだから邪魔するなあ!!!」


ぐおっと勢いよく少年に振りかぶられるヘドロの手。プロヒーローたちも駆け出し、もうおしまいかと思われたその時だった。何者かが、少年二人の腕を掴む。


「君を諭しておいて…己が実践しないなんて!!!」


その声に閉じていた目を開ける。口元を覆っていたヘドロが少年に向き、カツキくんの意識が薄れたおかげで、息が整った。


これは、好機だ…と思ったのも束の間、


「プロはいつだって命懸け!!!!!!

“DETROIT SMASH”!!!!!」


「ーーーッ!!???」


何が起こったのだろうか。ゴオッと爆風が起こり、風圧で全てが吹き飛んだ。腕を掴まれていた二人とは違い、軽く意識が飛び、俺は空中に投げ出されていた。


一人画風の違う男の人が、しまったというような顔をした。半分近く埋もれていたため、俺がいることに気が付かなかったのだろう。

俺は地面に叩きつけられる前に、地面と自分との間に空気層を作る。酸素の薄い身体では、力が上手く調節できず、クッションのようになってしまった層に吸収された。


「ぅ…っ…けほっ……あ…新たな、発見…」


こんな時まで研究の方に頭が行ってしまうのは、職業病に近いのかもしれない。“個性”を解除し自身を下ろすと、また意識が遠のき、ぐったりと地面に倒れ込んだ。








この後、散ったヘドロはヒーローらに回収され、警察に引き取られた。助けに入った少年はものすごく怒られ、逆に俺とカツキくんは称賛された。


「すごいタフネスだ!それにその“個性”!!プロになったら是非、事務所の“相棒(サイドキック)”に!」

「………」


「君もあの消火は見事だった!!火事の被害は最小限!!意識が薄れる中、素晴らしい判断!!プロになったら、是非」

「さ、酸素ボンベください…」


ふらふらとする頭で吸入酸素ボンベを吸う。褒めるより先にすることあるだろうと思いながら、チラリとカツキくんを見る。彼は複雑そうな表情で黙り込んでいた。

彼はとても強いし、言われた通りタフネスだ。しかし、それ以前にまだ中学生。俺も中身は28歳だとはいえ、見た目は中学生くらいなのだ。かける言葉はそこじゃないだろう。



病院に行くのは断り、火傷の手当だけ受けて俺はその場を後にする。

先程も、耐える耐えないの話ではない。何がなんでも助けるのが、ヒーローというものでは無いのだろうか。上手く言い表せないが、今回の事件でプロのヒーローの対応に少し疑問を覚えてしまった。














mokuzi