23
帰路につくと、戦闘中に落としたスーパーの袋が見つかった。拾い上げ中身を見ると、やはり卵は割れてしまっていた。
「……今日はもう、疲れたし…オムライスでいいかな…」
無残にも割れてしまった卵を見て落胆してしながら、俺は重い足取りでマンションへと足を進めた。
歩きながら、先程助けてくれたヒーローを思い出す。風圧で上昇気流が起こり、右手一本で天気が変わってしまうようなすごいヒーロー。
ーーー彼の名は確か、“オールマイト”
名は体をあらわすというが、彼のヒーロー名こそこの言葉に相応しい。平和の象徴と言われるだけあるなあ、と勉強したところを思い出す。
合鍵でドアを開ける。見慣れた風景が広がり、ほっと息をつく。今日は長い一日だった。
さてと、相澤さんが帰ってくる前に晩御飯を作らないと…
「…っ、…あ…れ……?」
目の前が霞み、足元がおぼつかない。俺は何とかリビングに辿り着けば、ソファに手を付き、身体を支えた。
ーーー身体は正直である。
極端な酸素欠乏症の繰り返し、爆破による身体へのダメージ…酷使した身体は、思ったよりも反動が強く、悲鳴を上げていた。
家に着いた途端安心してしまった俺は、無意識に張り巡らせていた緊張の糸が、プツリと切れてしまったらしい。
「…ッ、はッ、…はっ……い、き…ッ、出来、な…ッ」
ヒュー…ヒュー…と細くなる呼吸。うまく息が吸えず、ぐらりと傾いた身体は、そのまま床に倒れ込んだ。
苦しくて、胸の当たりを抑える。この家に人はいない。先程のように近くにヒーローがいる訳では無い。
「…あい、ざわ…さッ……」
ポケットに入れていた電子端末に手を伸ばし、電話帳の一番上を押す。
『ーーーー……風間?』
ーーー今日何度目かになる意識が遠のく感覚に、俺はゆっくりと目を閉じた。
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