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結局、会場の中に入ったあとも受験番号で座ろうとすれば席が彼の隣だったため、そこに腰かければ何故か“エアプ野郎”とあだ名をつけられてしまった。
一応精神年齢には歳上なので、ある意味当たっていることに鋭い子だなぁと呑気に捉える。
プレゼント・マイクとして前に立っているひざしさんに笑ってしまいそうになるのを堪え、試験内容の説明を聞く。
ーーー10分間の模擬市街地演習。
演習場に現れる“仮想敵”を行動不能にすることで、ポイントを稼ぐことが出来るというシステムだ。これは、守形のように直接戦闘向きではない個性の人は、悔しい思いをするのだろう。
隣で説明を聞いていた爆豪が、俺の持っている資料を覗き込んでくる。「てめぇは潰す」と物騒なことを呟いたと思えば、今度は反対側を覗き込んだ。
「同校同士で協力させねぇってことか」
「ホ、ホントだ…受験番号連番なのに会場違うね」
「見んな殺すぞ」
お前も見てんじゃねぇかと思いながら、ふと彼の隣に目をやると、またもや見知った顔を見つけた。あのもさもさの緑髪は、あの時飛び出してきた少年だった。
「もしかして…あの時助けてくれた…」
「あ、あっ、ああっ、君はあの時の!」
「俺は風間空悟。あの時はありがとな、飛び出してきてくれて」
「ぼ、僕は緑谷出久!い、いや、そんな…結局あの後プロの人達には怒られちゃうし、オールマイトにも迷惑を…それに、何も出来なかった…」
彼の名は、緑谷出久というらしい。あの時のお礼を言えば、彼は謙遜してしまったようで、ごにょごにょと吃ってしまった。
彼は何も出来なかったと言ったが、あの時考えるよりも先に飛び出したのは彼自身であり、彼が動いたからこそ、あの場が動いたのだ。それはヒーローの素質があるからなのではないかと俺は思う。
ぼんやりと緑谷を見ながらそんなことを考えていると、隣の爆豪が痺れを切らした。
「俺を挟んで喋んなや…ッ!」
「ご、ごめんかっちゃん…!」
「悪かったって、勝己」
「か、勝己…!?」
緑谷が考え事をし始めたのか、ブツブツと唱え始めた。考え事をする時はのめり込むタイプなのかと思っていると、突然前の方から「ついでにそこの縮毛の君!」と、眼鏡をかけた少年が緑谷に指を指してきた。
「先程からボソボソと…気が散る!!物見遊山のつもりなら即刻、雄英から去りたまえ!」
「すみません…」
指摘された緑谷は口元を抑える。俺が気安く話しかけたせいで、緑谷が怒られてしまった。内心謝罪しつつ、ひざしさんが眼鏡くんから質問された内容に答えていたので、そちらに耳を傾ける。
四種目の敵は0ポイント。所謂、大暴れする“ギミック”でお邪魔虫らしい。ただ単に邪魔するだけなのか、それとも何か意図があるのか…その真偽は謎のまま説明が終わった。
「“Plus Ultra”!!それでは皆良い受難を!!」
いよいよ実技試験が始まる。この一年、プロヒーローと特訓したからには、無様なところは見せられない。
俺は気合を入れ直し、演習場へと向かった。全員がバラける中、一人ついてくる人間がいる。
「…勝己、まさか…」
「エアプ野郎、ぶっ潰す」
「いや、他人への攻撃はご法度だからな?」
「分かっとるわ!」
この試験。荒れそうです。
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