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体操服を着てグラウンドに出ると、消太さんはいきなり“個性把握テスト”を行うと切り出した。雄英は“自由”な校風が売り文句であり、それは“先生側”もまた然り…ということだ。
“個性”を使った8種目の体力テストだと言えば、消太さんは爆豪にボールを渡す。爆豪は円の中に入ると、言われた通り球威に爆風を乗せ思い切り振りかぶる。
「んじゃまぁ……死ねぇ!!!」
「………死ね…」
「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
記録は705.2mと驚異的な数字を叩き出し、生徒達が興奮し出す。誰かが「面白そう」だと言えば、途端に消太さんの表情が変わった。
「ヒーローになる為の三年間。そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?よし、トータル成績最下位の者は、見込み無しと判断し“除籍処分”としよう」
「「はあああ!?」」
「…ま、マジか…」
「生徒の如何は先生の“自由”。ようこそこれが雄英高校ヒーロー科だ」
まさに入学初日の大試練。悪い顔をした消太さんが生徒達を凄む。全力で乗り越えてこいと生徒達を煽ると、“個性”を使った体力測定が始まった。
1種目目の50m走の為に移動すると、俺は隣の緑谷の顔色が、悪くなっていくことに気がついた。何かを抱え込んでいる、そんな表情。
「緑谷?」
「どあっ!わっ、ぁあ、風間くん…!お、同じクラスだったんだ…!」
「緑谷といい勝己といい、何かの縁だよなぁ…試験合格できたんだし、大丈夫だって」
落ち着いて肩の力を抜けよと肩をぽんぽんと叩くと、「そ、そうだよね…」とあまり良くなさそうな反応が返ってきた。本番で緊張するタイプなのかと思っていれば、緑谷の番が来た。二人ずつ測定するらしく、隣には爆豪が立っている。
「爆速!!ターボ!!」
「…成程、ああいう使い方もできるのか」
爆豪は両手を後ろ手にし、爆破を繰り返しながら前に加速することで、タイムは4秒13となった。一方の緑谷といえば、個性を使った様子はなくタイムは7秒02。そういえば、緑谷の個性ってどんなのだろうかとぼんやり考える。
「最後、…あー…風間」
「……あ、はい。…一人かぁ」
「いいから早くやれ」
ぼんやりしていれば、最後である自分の番が来た。消太さんに苗字で呼ばれるのは久々だったため、少し反応に遅れながら、一人スタート地点に立つ。
《ふふ、空悟って呼びかけてたよ》
「よく見てたな守形。それも後で言ってやろう…」
少し身体をほぐしながら、体全体の空気抵抗を無くす。そして、スターティングブロックに足を置き、足の裏に空気を圧縮させる。
「勝己の、ちょっと借りるぞ」
スタートの合図で先程見た爆豪のように、空気を溜めては放ち、溜めては放ちを繰り返すと、空気抵抗を無くした身体は前に進んでいく。地を蹴るというよりは、空気中を駆けるイメージだ。
ーーータイムは、4秒24
「てンめぇ…エアプ野郎…!」
「すごいな、勝己のやり方真似したら上手くいった」
「真似すんなやッ!!」
「勝己の個性の使い方がすごいと思ったから、取り入れたんだって。な?」
「ぬあぁっ…腹立つ!!!その澄ました顔、今すぐ歪ませたる…っ」
いい記録が出たので参考にした爆豪に報告すれば、ものすごくキレられた。褒めたつもりだったんだけどなと言うと、彼はそっぽ向いて行ってしまった。
「か、かっちゃんに怯むことなく話しかけていく…風間くんすごい…」
それを見ていた緑谷がブツブツと何かを呟いていたが、取り残された俺はというと、若い子は難しいなぁとのんびり考えながら、次の種目に移ったのだった。
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