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校内に警報が鳴り響けば、今度はアナウンスが響き渡った。
『セキュリティ3が突破されました』
『生徒の皆さんはすみやかに屋外へ避難してください』
「セキュリティ突破って…」
アナウンスが流れると、生徒達が一斉に外に駆け出そうと出入口へ走る。瞬く間に逃げ惑う人で溢れかえり、辺りは混乱の渦に巻き込まれた。混乱する生徒の声が、食堂に響き渡る。
唐揚げ定食など食べている場合ではない。轟は冷静だったため、俺は慌てる二人に声をかける。
「芦戸、俺に掴まってて。葉隠は轟に」
「「えっ、う、うん」」
「轟、そのまま俺に掴まって」
「ああ」
彼も俺の意図が分かったのか、伸ばされた手を掴んでくれた。そのまま引き寄せ、轟自身の腰に手を回して抱える。足に空気を溜め、上空へと飛び立てば、そのまま空中を駆ける。
「風間くん飛べるの!?」
「便利だな。空中に留まれんのか」
「……取り敢えず、落ち着くまで端にいよう…人抱えるのは初めてだから、半径1mから出ないでくれ…」
騒ぎが収まるまでは食堂からは出れそうにないため、俺たちは端の方の空中に留まることにした。3人を抱えることは初めてだったため、上手く飛べたことに無意識に止めていた息を吐く。
「…大丈夫か、風間」
「平気平気、轟も大丈夫?」
「ああ、お前が引き寄せてくれたから」
轟に顔を覗き込まれ、大丈夫だと笑って返す。彼が無事ならそれでいい。俺は足元の空気圧を緩めないよう気をつけながら、ほっと胸を撫で下ろした。
「あ、風間ご飯粒付いてるー」
「ちょっ、嘘だろかっこ悪…」
「ん、」
「………は?」「………え?」
《わぁ…轟くん少女漫画みたいだ…》
緊急時にご飯粒を付けていると言われ、恥ずかしさを覚えたのも束の間、轟はひょいっと軽い動作で口元についているご飯粒を取ると、そのまま口に入れた。
開いた口が塞がらないとは、まさにこの事だ。
出会って間もない他人のご飯粒を食べるだろうか…近頃の若い子は食べるのか?そうなのか?
呆然としている俺を他所に、轟と女子二人がまだ早いだの、無自覚なのかと話していたが、それも聞こえなくなるくらい大きな声が聞こえてきた。
「皆さん…大丈ーー夫!!ただのマスコミです!なにもパニックになることはあひません大丈ー夫!!ここは雄英!!最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!」
「…飯田…?」
出入口の壁に非常口の標識のように張り付いた飯田が、混乱していた生徒達を落ち着かせる。その姿に、やはり彼は面白いなぁと思った。
真面目で正直な少年、飯田天哉。
《飯田くん、かっこいいね…!》
「…うん、俺はやっぱりあいつが委員長だと思うよ」
警察が到着し、マスコミは撤退。事態は収束へと向かっていった。
ーーー午後のホームルーム
「あんな風にかっこよく人をまとめられるんだ。僕は…飯田くんがやるのが“正しい”と思うよ」
緑谷の申し出により、委員長は飯田が務めることとなった。やはり、ここは適材適所と言ったところだろう。
「委員長の指名ならば仕方あるまい!!」
「任せたぜ非常口!!」
こうして、1‐Aの委員長は飯田。副委員長は八百万となった。
「……それにしても…マスコミがセキュリティ突破するってすごいな…取材に対する執念か?」
穏やかに流れる昼下がり。
この時、影で動く真に賢しい敵の恐怖を
誰が予想していただろうか。
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