救助訓練のお時間でした


本日の午後の授業は、消太さんとオールマイト、そしてもう一人の教師を含めた三人体制で行われる“救助訓練”となった。

今回の授業では、活動を制限するコスチュームか否か自己判断で着用するらしい。俺は特に制限はないため、コスチュームに着替え、移動するためにバスへと向かう。

いよいよ待ちに待った救助訓練だ。守形の個性を人助けに使用するには、どうするべきかしっかりと学ばなければならない。


「それにしてもバスで移動なんて…雄英ってほんと広いんだな…」

「バスの席順でスムーズにいくよう番号順に二列で並ぼう!」

「おぉ…委員長張り切ってる…」


しかし、飯田に先導されながらぞろぞろとバスに入るが、思っていたシートの並びではなかったため、飯田は肩を落とし項垂れていた。


蛙吹が緑谷の“個性”が“オールマイト”に似ていると切り出す。確かに似ているかもしれないが、彼はオールマイトに憧れているため、使い方も似てしまうのではないかと俺は思う。


前方の向かい合う席に座った生徒達が、わいわいと盛り上がる中、俺は隣に座る轟を見る。

この騒がしい中で、彼は目を閉じていた。もしかしたら寝ているのかもしれないと思い、俺は彼に声をかけずにその横顔を見つめる。

彼の行動は理解し難く、戦闘訓練後の彼の発言や、マスコミの騒ぎの中でされたことを思い出す。

彼は顔に火傷のあとらしきものがあるものの、とても整った顔をしている。恐らくプロヒーローともなれば、女性人気は間違いなしだ。


ーーーそんな彼のあの行動は、一体なんだったのだろうか


「……うーん、わからん…」

「派手で強ぇっつったら、やっぱ轟と爆豪だな」

「その轟を圧倒した風間もな!」

「……お、俺?」


切島と上鳴から突然話題を振られ、少し戸惑いながら反応を返す。名前が挙がった爆豪はというと、当然だと言いたげな様子だった。

蛙吹に口が悪いから人気が出なさそうだと指摘されれば、怒りを顕にする。確かに、ただ強いだけではヒーローになれないだろうなと俺も納得する。


「もうちょっとだけ言動が優しくなれば、勝己も親しみやすいのにな」

「あぁッ!?エアプ野郎が上から物言ってんじゃねぇぞッ!!!親しみやすいだろうが!!」

「まあ、俺は勝己の個性も好きだし、今のままでも親しみやすいけどさ」

「!…ちっ…そういうとこがムカつくんだよ」

「え……わ、悪い」


俺の言葉が気に触ったのか、舌打ちをしながら顔を逸らす。なにか不味いことを言っただろうかと謝ろうとするも、既に爆豪は前を向いていて、上鳴の“クソを下水で煮込んだような性格”というボキャブラリーに食らいついていた。


「その点風間は人気出るよ〜!この前の騒ぎの時、3人抱えて飛んじゃうとか、かっこよかったよー!」

「風間は顔もいいもんなぁ、イケメンずりぃ〜!」

「上鳴もイケメンだと思うよ、俺」

「イケメンからお墨付きもらいました!!!」

「もう着くぞ。いい加減にしとけよ…」


ワイワイと騒いでいると、前方に座っていた消太さんが振り返る。全員背筋を伸ばして返事をすれば、一気に静かになった。


そういえば、隣の轟は寝ているのだったと口を抑える。ちらりと彼を確認すれば、隣の俺も騒いでいたからか、轟は目を開けていた。

俺は声を小さくし、彼に話しかける。


「悪い、起こしたか?」

「………お前、爆豪が好きなのか」

「……………うん??」

「…そうか」


彼はそれだけ呟くと、再び目を閉じた。

確かに爆豪のことが好きだが、それはあくまで個性や性格上の話である。轟は、何故そのことを確認したのだろうか。


またもや彼のことがよく分からなくなり、施設に着くまで俺は頭を悩ませることとなった。








mokuzi