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彼は直ぐに平然を取り戻し、こちらに探りを入れるように問いかけてくる。
「…あんた、見てたよ。4位の強個性様が何のつもり?」
「何って、勝ちに」
そう答えた瞬間、思考が遮られ、頭の中が真っ白になった。彼は、当然のように微笑む。
ーーーなら、お望み通り組んでやるよ
ーーーあんたは、俺の足となれ
「『………やっぱり、僕と似てる』」
「っ、は?なん、で…」
「『あなたの人を操る“個性”…僕の“個性”と相性は悪いみたい』」
目の前の彼は信じられないという表情を浮かべ、焦りを見せた。今まで個性が効かなかった相手は、恐らくいなかったのだろう。
先日USJで脳無に個性が効かなかったあの瞬間、焦りや絶望感を覚えたことを昨日の事のように思い出す。
「お前っ…個性の二つ持ちか…?恵まれた側の人間かよ」
「『二つ持ちじゃなくて、僕らは二人なんだ。二人で一人。…僕は、この“憑依”の個性を…人助けに使いたい…!敵向きじゃないって、証明したい…!!』」
「……!!」
目の前の彼にも思い当たる節があったようで、疑いの目が確信へと変わっていく。同じような個性を持つ者同士、お互いの境遇を少なからず察したのだろう。
ーーー今度ゆっくり、あなたとお話がしたいな。
「『…入試の実技試験で、僕の個性が効かなかった人がいたんだ。弾き出されるような感覚…あれは、確かにあなただった』」
「……入試……そう言えば、一瞬何かが俺の中に入ってきて…」
入試という言葉に心当たりがあるようで、これ以上は言わなくても分かってもらえるだろうと、僕は主導権を空悟にぃへと返す。
「ーーー…訳あって曖昧な答えしか返せねぇけど、本当に個性が二つあるわけじゃねぇんだ。俺はさっき話していた子と身体を共有してる。“個性事故”だと思ってくれ」
「…個性事故、ね」
少し落ち着きを取り戻した彼は、納得はしていないものの理解はしてくれたようだった。事情を話すには時間が足りないし、彼にどこまで伝えていいかは今の俺には分からない。今は目の前の騎馬戦を乗り切る他ないのだ。
少しの沈黙の後、すぐに交渉時間の終わりが告げられた。俺は、彼の個性がかかっている後ろの二人に視線を写す。
「後ろの2人は、そのままでいい。元々お前が自分の力で得たもんだから、俺がどうこう言う筋合いもないしさ」
「…いいのか。一人はあんたのクラスメイトだろ」
ちらりと尾白を見れば、彼は呆然とそこに立っていた。酷な話、自分の個性を活かして何が何でも勝ちたいという彼の気持ちが、尾白よりも一枚上手だったということだ。
俺は目を閉じ、守形へと問いかける。守形もまた、目を閉じて自身に問いかけているようだった。俺達はゆっくりと目を開き、目の前の彼を見つめる。
『………僕は、…勝ちたい』
「……勝ちたい。お前と」
「…わかった」
ミッドナイトの合図で、試合が始まろうとしていた。俺は配られた自分のハチマキを彼に託す。
「風間空悟。もう1人は依代守形。さあ、頼むぞ大将」
「…心操人使。…風間、依代。まあ、上手く動いてよ」
お互い顔を見合わせ、ニッと口角を上げる。心操は俺からハチマキを受け取り、自分の首へ掛けた。
ーーー大丈夫、俺達なら勝てる。
「さァ上げてけ鬨の声!!血で血を洗う雄英の合戦が今!!狼煙を上げる!!!!」
心操チーム
・心操 75T
・風間 195P
・尾白 155P
・庄田 45P
TOTAL 470P
騎馬戦 START!
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