07
自分の助けた命。少年の個性か何かだったのかもしれないと思うも、少年の身体にある傷跡が妙に印象に残っている。
何か事件の前触れではないかと気になってしまった彼は、知り合いの刑事に事情を説明し、病院を訪れることにした。
そして、物語は冒頭に至る。
教えられたの病室が近くなると、突然辺りの空気がガラリと変わり、自身に緊張感が走る。ドア付近の看護師が声を荒らげた。
「きゃぁあっ!!先生!!守形くんの個性が!!」
「守形くん!!落ち着くんだ!!!」
窓が割れたのだろう。吹き込んだ風が吹き荒れ、更に空気に圧が掛かる。
“個性”が暴走したのか、悲痛な叫び声が聞こえてきた。
「ウァぁあッ…!!!違う違う、俺はッ、こんなの、知らないッ、俺は依代守形なんかじゃ、ないッ、風間、空悟ッ…だ…ッ!!!っあ、ぐ、くる、し、ッ」
彼は少年の叫びを聞き取り、これは合理性に欠けるのではないかと舌打ちをする。
しかし、一度助けた命を無駄にされては堪ったもんじゃない。そう心の中で思いながら、彼は病室に駆けつけると、立ち竦む医師と看護師を押し退け、自身の個性を発動した。
「…ッ、たす、けて」
「今、助けてやる…ッ!」
彼が少年を見つめると、音がプツリと止んだ。
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