U

おちる、落ちる、オチルッ………。
周りの景色が高速で過ぎてゆく…終わりだとルキは瞳を強く閉じた。

「キ…ルキ!」

誰かがルキを呼ぶ声…バサバサっ…と近付いてくる羽音。

「大丈夫だ…ルキ」

耳元で聞こえた男の声…ルキを守るように抱き締める優しい腕…大丈夫だと何度も紡がれる言葉。

「ゼネルガ…」

ルキは彼..ドラキュラ伯爵を認めると、安心して意識を手放した。

―――ゼネルガの傍なら大丈夫…

冷たい雨に混じり、温かい涙がキラキラとルキの頬を伝い落ちた…。

「ルキ…わたしはお前を……」

伯爵はルキを大事に抱くと自身のマントの中に包み込んだ。





なぜ、わたしはドラキュラで

お前は人間なんだ…?



それよりも

なぜ世界はこんなにも


わたしが“ルキ”を

愛することを許さない……

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