V

放課後。
カズマは、学校の生徒玄関の隅でルキを待っていた。

「…ルキ」

不安そうに辺りを見回し、ルキが早く来るようにと心の中で呟いている。

「よう、カズマ」

近付きながらカズマに話し掛けてきたのは数人の男子生徒だ。
カズマは恐る恐る彼らを見上げた。

「……………」

「おい、カズマ…ちょっと顔かせよ」

1人がそう言うと、彼らはカズマを連れていく…。



数分後。
ルキが早足でカズマがいつもいる生徒玄関の隅に来た。

「ごめんね?カズマ、遅くなって…って…」

いつもなら、時間に少しでも遅れると“遅い”とか“もっと早く来て”とか言われるのだが…声どころか、カズマの姿さえ無い。

「あれ?カズマー?」

不思議に思いながらも、呼びながら辺りを見回したが、やはりいない。

「どこいったんだろ…?」



『かれをたすけたい』



ルキの頭の中に響いた…誰かの声。



『きずついてほしくないの…』



「…な..に……」

何が起きたのか分からないルキだが、“行かなければならない”と勝手に足が動いた…。

(…わたしは..何かを忘れてる……?)

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