2、君の寝顔

今日もまた、ベッドに眠る君を見詰めて...君の声がききたい。君の笑う顔が見たい。
いつもそう思うのに、君は眠ったままでその綺麗な空色の瞳をずっと見ていない。ただ君は、単純な呼吸を繰り返すだけ。

「昨日は君の呼吸が止まった...もう、僕の傍にいるのが嫌になった!?ルキ!!」

そう、無反応な君に怒りに任せて怒鳴っても、君はいつもみたいに“うるさい”って怒らない。
君の怒った声でもいい...だから、起きて。目を開けて僕を見て、こんな情けない僕を抱き締めて。僕が泣いてたら、ルキにくっついてていいんでしょ?

「ねえ、ルキ...僕の傍にいてよ」

君の、細くて青白い手に僕は泣きながらすがる。君の肌はもともと白くて綺麗だったけど、今ほどの色じゃない。触れただけで骨がゴツゴツなんてしてなかった。
君の手も体も触れれば柔らかくて気持ちよかった...のに、どうして?君は圧倒的に僕より強かった。持っていた霊神力も能力も才能も、勝ちに行く意志さえも軍の誰よりも孤高だった。

「僕は今も君に守られてる...」

この家は、君の結界の能力によって外の汚染された空気や敵の死骸から出る人体に悪影響な物質から守られている。
ここは数少ない軍の砦の1つだ。家だけでなく周りの木々、霊神力を使って動く島、その周りの海でさえもある程度の海域が汚染や敵の攻撃から守られ、僕達は敵の鋭い感知能力から逃げ延びている。

「紘樹!和国で第九小隊が複数の敵と交戦中だ。俺達も出るぞ!!」

窓の外、浮遊能力で宙に浮く僕の所属する第五小隊の隊長は自分以外の小隊メンバーにも声を掛けていた。また君の傍を放れなきゃいけないなんて、僕には耐えられない。
でも僕は行くよ、君に“紘樹は弱いし、敵の前でビビって泣くもんね★”って言われるのは嫌なんだ。

「はい、隊長!」

僕は本当は放したくない君の手をベッドの上にそっと置くと、ベッドから離れてクローゼットの扉を開ける。
右肩に自分の隊の番号の入ったジャケットを上に着て、君がいつも使っていた刀を腰のベルトに引っかける。君は本当に高度な能力が使用できる武器を持っている...ランクの低い僕じゃ扱えない代物だ。

「行ってくるよ、ルキ。僕がいない間にいなくなったりしないでね...」

窓から外に出て、浮遊能力で宙に浮く。ずっと眠り続ける君の寝顔を、出撃のために集まった第五小隊のところに着くまで目がはなせなかった。

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