V

チェシャネコの相手をした後、ハートの女王は城を抜け出そうとしていた。
帽子屋の主催するお茶会に行くのだが、まだ今日の執務は終わっていない。そのために白うさぎの命令でスペードのトランプ兵達に城中を探されていた。

「ここを抜ければ...」

ハートの女王は彼らに見付からないように庭に出て、花壇に咲く大きな花達の後ろに隠れて...森の中へと来た。
森に咲く草花達に内緒ねと言いながら森の奥、帽子屋の店へと向かう。

「やあ、いらっしゃい。リデル」

帽子屋の店の前、庭に設けられたお茶会の開場。準備をしている帽子屋はハートの女王に気付いて声をかけてくれた。
彼に微笑み返していると、お茶会のテーブルに人型の姿でうつぶせていた3月うさぎの長い耳がピクッと動いてこちらを向いた。

「きゃー!リデルだ!!待ってたんだよ、やっと僕に抱かれる気になったんだよね!?」

そう言いながらサッとハートの女王のところに来て抱き付いた3月うさぎ。彼女はハートの女王を大変に気に入っているため、会う度に口説かれたりセクハラをされる。

「やめなさい。君はいつも誰彼構わずに...」

「だってリデル可愛いんだよ!僕はアリスも大好き!」

そう言いながら3月うさぎの手は、ハートの女王の体を撫でている。
3月うさぎである彼女はいつも発情期のため、酷い時には場所も何もかも関係無く押し倒される事がある。

「いいのハット。お茶会の準備を続けてちょうだい」

ハートの女王はもう慣れたというように3月うさぎの腕から抜け出して言い、続けて帽子屋に聞いた。

「ところでナイトは家の中?」

帽子屋が答えようとするよりも早く3月うさぎが畳み掛けてきた。

「リデル!?僕というものがありながらあんなねずみを選ぶの!!?」

3月うさぎを見れば今度は大げさに泣いている。忙しい奴だと2人は思い、彼女をほっといた。

「彼なら自分の寝床で寝ているだろう。私の家だというのに...」

眠りねずみである彼が勝手に人の家に住み着くのはこの世界では当たり前の事だ。ハートの女王の私室にも住み着く神経の図太い奴である。

「じゃあ連れてくるね」

そう言ってハートの女王は帽子屋の家へと入って行った。

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