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楽しいお茶会も終わり、ハートの女王は城に帰って来ていた。
夕日の光が照らすハートの女王専用のテラス。花壇の色とりどりの花達を見れば機嫌の悪い、青い顔をしていた。
それを見て誰が来ているのかハートの女王は分かり、花壇を見渡した。

「ごめん、スモーク来てたんだ」

もくもくと紫色の煙が一角の花壇から上がっている。風でこちらに来る煙を手で払い除けて、ハートの女王は紫色の煙が上がる花壇の前にしゃがみこんだ。

「花達が嫌がってるからやめてくれない?」

「良いじゃないか。わたしの楽しみを取り上げるな」

そう言いながら水タバコを吸い、いもむしはハートの女王の顔に向かって紫色の煙を吹き掛けた。彼は水タバコを一番に好む、ヘビースモーカーである。

「やめて、私もそれ嫌いだって言ってるでしょ?」

「ハハハ、リデルもまだまだ子供だな」

水タバコを片手にいもむしは楽しそうに笑う。彼曰く、花達を愛でながら愛用の水タバコを吸うのが一番の楽しみだと言っていた。

「別に子供とか関係無いでしょ。体に悪いんだからやめたら?」

「それは無理だな。リデル」

即答で返してきたいもむしは、後ろの花の葉に寄り掛かった。寄り掛かられた花を見れば、しかたなさそうな表情をしている。

「わたしは花を愛でている時が一番生きていると感じるのだよ。そして、“これ”もやめられない」

いもむしは語ると水タバコをまた吸い、ハートの女王へ煙を吹き掛けた。
嫌だと言っているのに彼は毎回ここへ来る度にハートの女王へ水タバコの煙を吹き掛けるのだ。それもまた、彼の愛でる花との戯れの1つだ。

「スモークって女遊びひどすぎたでしょ...」

さすがに文句の1つも言いたくなる。ハートの女王は花壇の中へと手を伸ばし、彼の水タバコを取り上げようとした。

「誉められるのは嬉しいが、これはわたしのだ」

水タバコまでもう少しというところで、いもむしは器用に自分の後ろに水タバコを隠した。取ろうとするといつも失敗する。

「誉めてないし、ムカつくから今度こそスモークの首をはねようかな?」

機嫌の悪くなったハートの女王は、冗談混じりに首をはねようかと口にした。
いもむしはそんな彼女を見て小さく微笑みをこぼすと、帰り支度を始めた。

「リデル、機嫌を直してくれ。いつものを頼みたい」

いつもの調子で言ういもむしに、ハートの女王は呆れたように笑うと少し待っててと言ってテラスから城の中へ入って行った。

「いもむしが一番愛でる花はリデルだよなー」

花壇の何処から聞こえた声にいもむしは苦笑し、わたしはもう帰ると同じく城の花壇に住み着く彼に言った。

「スモーク、いつものバラのフレーバーでいい?」

「ああ、また花達を愛でに来るから...次はリデルもいてくれ」

そう言うといもむしはハートの女王から水タバコのバラのフレーバーを受け取って帰って行った。

「言い忘れたが、そこに倒れている奴を頼む」

いもむしの視線の先には、いつものように花壇の脇に倒れている彼がいた。



いもむしの楽しみ

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