T

とある昼下がり。小さな町から少し離れた森の中に建つ小さな家。
いつものように自分の体のすべてを覆い隠すマントを着て、出掛ける支度をする1人の少女...いや、正確には魔法人形の少女型が1体という方がこの世界では正しい。

「くれは、いつも買い物ばかりさせて悪い」

この魔法人形を“くれは”と呼ぶ、眼鏡をかけた優しそうな青年。彼がこの魔法人形の所有者、ミナトである。

「いいんです、マスター。私はあなた様の物ですから!」

そう言うと、くれはは元気良く扉を開けて買い物へと出掛けた。
外へ出ると、マスターのカモフラージュ用の結界を抜けて獣道を急いで走り抜け、流れの速い川を飛び越えて森を抜ける...そして、この森から少し離れた小さな町へと歩き出す。

(今日の夕飯は、マスターの大好きなオムライスにしよう!)

森を抜ける間、ずっとくれはは夕飯を何にしようか考えていた。
敵との戦闘もそうだが、もちろん食事も家事も全部くれはの仕事である。
くれはのマスターであるミナトは戦闘の采配は天才的なのだが、それ以外の事はまったく駄目なのだ。

「マスターは私の世界のすべてで...道具である私に”愛する“という感情を教えてくれた人...」

くれはの動くことの無い表情が悲しそうに曇った。
魔法人形にゆるされない、心を持つという行為...くれははいつの間にか、それを犯してしまっていた。

ーーーマスターの傍で魔法人形として存在できればそれでいい

くれはは感情をしまい込んで村で買い物をするのだった。

[ 46/66 ]
[*prev] [next#]
[戻る]