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本を読み始め、どれくらいの時間が経っただろうか...内容にも興味を惹かれて共感したり、この星の秘密なども読み進めていった。

「先代の魔王は人間を好きになったんだ...子供の頃のヴァイスってどんなかんじだったんだろう?」

ぶつぶつと独り言を喋りながら、ルキアは両手でページをめくる。
魔王補佐というエヴィルさんは先代の魔王に仕事をさせるために苦労していると言うのはすごく分かった。

「先代魔王のジャスティスって格好よかったのかな?」

右手を唇に当ててルキアが考えていると、突然に後ろから黒い何かが視界を通ったかと思うと...ヴァイスに抱き締められていた。
何となく、彼の抱き締める腕は力が強いような気がする。

「ルキア、我の相手はどうした?」

ヴァイスの声には怒りが混じっている。そう思うのと同時にヴァイスの手に彼の方を向かされ、抵抗する間もなく唇を塞がれた。
いつもよりも荒々しく、何度も角度を変え噛み付かれるようにキスをされて彼の舌は息をする間も与えてくれずに口の中を侵食してくる。

「っ、ヴァイッっ...」

息が苦しいと涙目でヴァイスにうったえて、それでも彼はすぐにはキスをやめてくれなかった。
少ししてお互いの唇から糸をひいて唇が離された。ルキアは急いで待ちに待った酸素を吸い込み、少しむせる。

「ヴァイスのバカっ...!」

もういきなり何なんだと彼に抗議するが、彼は彼で何やら不機嫌そうな顔をしている。
意味が分からずルキアはしばらくその場で呼吸をととのえていると、ヴァイスは読み掛けの“正義記V”を力任せに閉じてしまった。

「ちょっとヴァイス!?何で閉じるの!?私まだ途中までしか読んでないのに!!」

「こんなものなど読むな!大人しく我の相手をするのだ!!」

そう言いながらヴァイスはルキアの腕を掴み、横抱きにすると図書館をあっという間に出たかと思うと...そのまま城も出てしまった。
掴まれた腕にはヴァイスの手のあとが赤く残っている。痛いと言う間もなく、今は魔族の領土の上空を浮いている。

「ヴァイスなんか大っ嫌い...」

ルキアがヴァイスの顔を見ずにそう言うと、ヴァイスはそれが気に入らなかったのかルキアを横抱きにする腕に力がこもる。
それでも強すぎる魔族の力で弱い人間であるルキアを絞め殺したりはしない。

「なぜあんな物を読んでいた?」

ーーー我よりもジャスティスの方が良いのか...?

小さく続けられたヴァイスの言葉は、拗ねた子供みたいで...思わず彼の方を見れば恥ずかしそうに、それでいて悔しそうな表情をしていた。

「え?...ヴァイスあなたまさかしっ...」

“嫉妬?”と言葉にできないまま、ルキアの唇はヴァイスの唇にまた塞がれた。

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