これも求愛行為です

「轟くん…おはよう…!」
「!!」
「あの…!私轟くんのファンで…!」
「……!!」
「あっ待って!轟くーん!!」

苗字なまえ、高校一年生です。クラスでちょっぴり浮いてる男の子、轟雷市くんが好きです。
彼の話しかけられると挙動不審になる様子があまりにも可愛くて遠くから眺めている日々だったのですが、ある時彼が野球をしているという噂を耳にしたのです。
なので、ファンといえば近づけるのではないかと安易な考えで話しかけてみたのですが………

「に、逃げられた…!そんなに怖かったのかわたし…!!」

次はもう少しとっつきやすい表情を心がけよう………




「轟くん、こんにちは…!」
「!!」
「轟く〜ん…ほら……バナナだよ…こわくないよ………」
「……?! ?!え、え……?!」
「スーパーで買ってきたバナナだけど良かったら食べ、えっあっバナナだけ持って行かないでっあっ待っ轟くーん!!!」

お昼休みです。二回あった休憩時間の間に轟くんがバナナが好きだという情報を入手しました。昼休みと同時にダッシュでスーパーへ向かい、一番美味しそうなバナナを手に取ったのですが、私への不信感は相殺してくれなかったようです。ううん、いいの……わたし、轟くんにバナナを食べてもらえるだけで………

そんなことを考えながら、私はお弁当を持って裏庭へとやってきました。クラスに友達がいないわけではないのですが、みなさん少し轟くんに優しくないので轟くんのことを考えたい時はこうしてひとりになるようにしているのです。裏庭のベンチは風通しが良くてとてもお気に入りの場所です。どうやらあまり知られていない穴場のようで……あれ?

「と、轟くん……?」
「………!! あ、さ…さっき…」
「はい…!なんでしょう………?!」

ま、まさか轟くんと偶然出会うとは思うはずもなく、私の心はパニック状態です。か、かわいい…!!必死に言葉を紡ごうとする轟くんかわいい!!

「ありがと…ございます…」
「あっ バナナかな?いいよあれくらい…!むしろごめんねあんなんで…!!」
「お……おお………?!」
「あっあの、よかったらお弁当も少し食べない?残り物なんだけどトンカツが多すぎて…」
「とっ……トンカツ………!」
「……トンカツ、好き?食べる?」

ものすごい勢いでこくこくとうなずく轟くんに、私の母性本能が爆発しそうだった。今すぐ撫でくりまわしたい。なんだこのかわいい生物は。くそう……。少しのつもりだったけど正直お弁当全部差し出してもいい。というか、させていただきたい。
箸でトンカツを掴んで轟くんの口へと持って行く。轟くんはおそるおそると言った様子でトンカツを口にした。頬を紅潮させて声にならない声をあげている轟くんに興奮した私は「も。もう一個いる?あげるよ?」と幾度となく繰り返し、次々と轟くんの口へお弁当にあるだけおかずを運んだ。気分はヒナに餌を与える親鳥だ。

「スゲェ……美味かった………」
「ほんとに?!あ、明日から毎日轟くんの分も作ってこようか!!?」
「!!」

しまった、調子に乗りすぎたかな…?!びくっと肩を揺らした轟くんに反省していると轟くんは綺麗にお辞儀して何やら言葉を発しているようだ。聞き取れる位置まで近付いても大丈夫だろうか…?!

「また…食べたい、から……」
「! うん…?!」
「お、お願いします…!!」
「も、もちろん……!私頑張るよ…!!」

思わず轟くんの手を取ってそう言うと、轟くんはまた顔を真っ赤にして視線を泳がせはじめた。

「カハ……カハハハ………!」

あ、ああ……!轟くんが今日もかわいい…………!!!
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