隣の席の沢村くんは、とても賑やかだ。
「ハッ!今日宿題提出か?!」
「…もしかしてやってない?」
「ぬあああしまったああ!!」
エースになると宣言したあの日から、好奇の目に晒されていた沢村くん。
話してみるととてもまっすぐな人で、興味本位で覗いた野球部での彼も、とても、きらきらしていた。
そのまま当然のように見た試合で投げていた沢村くんは練習していた時以上に輝いていて、すごくすごく、綺麗だった。
「私の見る?答え合ってるか、わかんないけど…」
「ほんとか?!すまん!助かった!!」
席替えで隣の席になって、勇気を出して話しかけてから、私と沢村くんはよくこうして話すようになった。
話すと言っても学校であった当たり障りのない話ばかりだけれど、それでも私はその時間が一番好きだった。
「なまえー帰ろー」
「うん」
授業が終わったと同時に一目散に野球部へと向かった沢村くんを見送ったのと同じとこらから顔を覗かせた友人に、ゆっくりと立ち上がる。
沢村くんに会えない時間は少し物足りないけれど、沢村くんが頑張ってるのだと思えばその時間も苦ではなかった。
「なまえさあ変わったよね」
「? そう?」
「なんていうか………そう、」
◇◇◇
「おっ早いな苗字!おはよう!」
「おはよう、沢村くん」
沢村くんが元気に挨拶をしてきて、私も自然と笑顔で返した。鞄から昨日作ったものを探し、沢村くんの前に出して見せた。
趣味で作ったお菓子をたまに持ってきていたら、それを見た沢村くんに分けることになっていたのだ。
今回はただのクッキーだったけれど、沢村くんは渡すなりせかせかと嬉しそうにラッピングされたリボンを解く。
沢村くんみたいにきらきら輝いてる星と同じ形をしたそれを、沢村くんはひとつ、ふたつと咀嚼していった。
「ほんとうめーよな!!毎日食っても飽きねーし!」
「……毎日食べたいんだ?」
「おう!」
「…そっか」
ほら、とひとつ手にとって渡されたクッキーを口に入れると、沢村くんはまるで自分が作ったみたいに自慢げに笑顔を作って見せた。
沢村くんの言葉のひとつひとつがどれだけ私をどきどきさせているかなんて、沢村くんは気付いてすらいないんだろう。
だって、私だって自分では気付かなかったのだから。
"「好きな人でもできた?」"
こんなにも、沢村くんのことが好きになっていたということに。