私は一番じゃなくてよかった。
一番に向かって走っている人が好きだから、その人の背中を見ているだけでよかった。
たまに思い出したように後ろを振り返ってにこりと笑ってくれたら、それでよかった。
それでよかったはずだった。
その人の後ろに居られて我儘になった私は、時折無性に一番が恋しく、妬ましくなる。
そんな子供みたいな心を押し殺しては泣きそうになって、私は一番から遠ざかっているのだと思った。
「じゃあ俺は全然なまえのタイプじゃねえな!」
「え?」
「俺はなまえのこと一番大事だからな!」
目の前の私の大好きな一番は、軽々と私の気持ちを拾い上げる。
会えなくて寂しかったという気持ちも、振り向いてくれなくて妬ましかったという気持ちも、まるで最初からなかったかのように私を一番に近くする。
「えっで、でも、じゃあ野球は?」
「野球となまえに一番も二番もねえ!両方とも同率一位だ!」
「‥‥で、でも野球に割く時間の方が多いじゃん」
「野球をしてる俺も好きなんだろ?」
というか、付き合ったきっかけも野球だしな!とけたけた笑う栄純に、私もなんだか納得してしまって、一緒になって笑った。
私の一番は、悠々と私を一番にする。
「‥‥で、寂しかったんだろ?存分に甘えてよし!」
「‥‥‥おっしゃる通り」
栄純には一生敵わないなあなんて思いながら、私は一番大好きな栄純の胸に頭を預けた。