相生 二

なまえとは生まれた時から今の今まで、ずっと一緒だった。誕生日も近く、生まれてすぐに隣のベッドで寝あったような仲で、何の気兼ねもなく後腐れもなくずっと共に過ごしてきた。そうして一緒に生まれて一緒に育ったはずの彼女は、今俺とは別の道を歩き始めようとしている。これは生きていればぶちあたる当然のことだ。これは当たり前のことで、今までも何度だって繰り返してきたことのはずなのにどうして、どうして俺はこんなに‥‥苦しいのか。

「‥そうか、俺は‥‥」




昨日のことがあって気まずい気持ちにくすぶられながら、なまえに話があると声をかけた。彼女はあっさりとそれを了承して、少し拍子抜けする。

日差しが強いからと大きな樹の下に出来た影に入って、またなんとなく落ち着かない気分になった。

「で、どうしたの?話って」
「‥‥‥」
「‥‥進路の話?」
「!!」

ズバリと心中を当てられて、だらりと汗が流れ出てくる。分かりやすいと笑うなまえに、バツが悪くなって顔をそらした。

「‥お、おまえは、寂しくねえのかよ」
「寂しいけど、寂しいからって諦めたら何も出来ないし」
「ぐっ、そうかもしれんが‥!俺とお前とでは寂しいの度合いが違うだろ!!」
「? なんで?」
「だって俺は‥‥!!」

だって、俺は、

「お前が好きなんだよ!!」
「‥‥!」
「好きだから、なまえが傍にいないと、なんというか‥その、だな‥‥」

言いたい気持ちも伝えたい言葉も上手く出て来なくて、自然と視線が俯いていく。せめて言いたいことだけでも伝えなくては。言いたいこと?言いたいことって、俺がなまえに言いたいことなんて、そんなの。

「頼むから、俺の傍にいてくれ‥」
「栄純‥‥」

俺の名前を呼んだきり何も言わないなまえに不安になって、下げた頭をおそるおそる上げる。驚くことに、そこには顔を真っ赤にしてこちらを見下ろすなまえの姿があった。

「栄純、私のこと好きだったの」
「‥‥お、おう」
「いつから好きだったの」
「わかんねえよ、昨日気付いたのに」

昨日?と聞き返しながらくすくすと笑う彼女に、吃りながらも期待に胸を膨らませ返事を促す。


「私も、栄純が好きだよ」
「!、じゃあ」
「でもごめん。栄純と同じ大学には行けない」

期待と裏腹に返す言葉は昨日と変わらなくて、歯をくいしばる。そんな俺を見てまたくすくすと笑うなまえを訝しげに見つめると、なまえは昨日していた遠くを見つめるような瞳で俺のことをじっと見た。

「話してなかったけど、私スポーツ医療専門のところに行くの」
「‥‥スポーツ、医療‥?」
「そう」

それって。もしかしなくても、そういうことで。じゃあ‥‥

「栄純、もうわかったんでしょ?だらしない顔してる」
「い、言われなくちゃわかんねーよ!」
「‥嘘ばっかり」



「そうだよ。私の夢は、栄純のため。栄純の隣にいるためだよ」


その言葉に有頂天になって、思わず彼女に抱きついた。
‥‥人前での恋人としての動作は、どうやら話し合う必要がありそうだ。痛む頬を撫でながら、めいいっぱいの笑顔を見せた。
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