あたたかい日の光が木の葉を潜り俺を照らす。
喧騒から離れ、人の思惑や都合から離れ、
何も考えず、ただぼーっとする。
ふと隣を見やってみれば、同じくぼーっとしていたであろう彼女と目が合う。
「どうかしたか?」
「い、いえ!なんでも」
慌てたように目をそらした彼女の顔は、少し赤らんでいたかもしれない。
熱でもあるのだろうか、それとも、日の光に当てられたか。
尋ねようと思ったものの、またすぐに心地よさそうな顔をして目を瞑った彼女を見て、口を閉じる。
彼女と共にこの時間を過ごすようになってから、幾日が経っただろうか。
彼女と過ごす時間はとても穏やかで、和やかで、あたたかい。
庭園は誰しもが落ち着く、お気に入りの場所だと思うが、特に彼女は俺と同じくらいに気に入っているようだ。
最初は遠慮して隣に来なかった彼女も、今ではそこが指定席だ。
約束をしていなくとも自然と集い、微笑み合う。
「…なまえといる時間は、とても心地良いな」
返事はなかった。けれど、普段からあまり会話の無い俺達だ。今更何も不思議ではない。
むしろこの沈黙でさえ心地よいとすら感じるほどだ。
そう思って目を閉じると、一際大きな風が吹いた。
「風が強くなってきたな…そろそろ帰ろうか」
風邪をひいてしまってはいけないと、彼女の方を向き立ち上がる。
しかし、彼女の返事はない。
「………なまえ?」
さすがにおかしいと思って顔を覗き込むと、
薄く開いた唇から小さな寝息が聞こえてきた。
「…眠ったのか」
若草のような髪がきらきらと光を反射しながら揺れていて、綺麗だった。
髪から時折見える表情は、とても穏やかで、稚い、子供のような顔をしていた。
そっと体の赴くまま手を伸ばし頭を撫でてやると、心なしか先程より微笑んだようにも見えた。
「もう少しだけ、ここにいるか」
あどけなく微笑んで俺の手を受け入れた彼女が酷く愛らしく思えて、
俺はいつもより少し距離を縮めて、温めるかのように彼女に寄り添った。