breviloquente

「ジュリウスのこと、嫌いなの?」


任務帰りのある日、同期の彼女にそう尋ねられた。

見知らぬ地の慣れない環境、口数の少ないなりにできるだけ会話を多くしようと努力したつもりだったけれど、
無口、無表情、無愛想、なんて無のつく言葉を並べたてられても全て当てはまってしまいそうな人間だ。それでも足りなかったのだろうか。

「ば、バッカナナ!おまえ何言って…!」
「いいよロミオ、そう見えても仕方ない」
「いや、そういう意味じゃなくてさあ…」

幸いジュリウスは用があるらしく、現在は三人で任務をこなしている。
それを機に訊いてみたのだと、ナナは言う。

「なんか私にできることあったら教えて欲しいなーって思って!」
「心配してくれてありがとう…でも、大丈夫だから」

実際、ジュリウスと会話を続けるのは苦手だ。
けれどこれはどうしようもない問題で、きっと永遠に解決しないだろう。
そう思って話を切り上げると、さっさとフライアへと帰還した。
報告は先輩であるロミオが任せろと言うので、私は一目散に大好きな場所へと足を運んだ。




「……ジュリウス」

庭園の樹の下、花に囲まれるようにしてそこへ座している彼は、瞑っていた眼をゆっくりと開いた。
揺れる睫毛が日の光に反射してキラキラと瞬いていて、綺麗だった。

「任務が終わったのか、お疲れ様」
「ジュリウスも用は済んだんだね、お疲れ様」

他愛のない仕事の会話を一言二言交わしながら、ジュリウスへと近付く。
そっと横へ腰掛けると、ほんの一瞬、優しそうに笑った。
すぐに目を瞑って空を仰いでしまったけれど、確かに彼は微笑んだ。
その事実が無性に嬉しくなって、私も空を仰ぎながら、小さく笑った。


そのまま穏やかな時が過ぎた頃、頼りになる強くて誇らしい、少しお節介な先輩の盛大なくしゃみが庭園に響いた。
観念したとでも言いたげな顔で、ロミオとナナは私達の前に現れた。

「盗み聞きしちゃってごめんね!ロミオ先輩がどうしてもってしつこくて〜」
「は?!ちょっとナナ!一緒になって聞いてたんだからおまえも同罪だろ?!」
「そもそもロミオ先輩が誤解を解きたいーとかなんとか言うから〜」

2人のいつものやりとりに思わず顔を見合わせてジュリウスと笑い合っていると、
ふいにナナが何かに気付いたかのように「あ!」と大きな声をあげた。

「ごめんねなまえちゃん!あんなこと訊いちゃって」
「え?、あ」

一瞬何のことかと理解できなかったけれど、すぐにはっとして口に出そうとする。
それよりも早くナナが満面の笑みを浮かべ、私の頬を林檎よりも赤く染めてしまったのだった。



「なまえちゃんはジュリウスのことが大好きなんだね!」



……今回ばかりは、彼女の言う通り私の想い人である彼が、人の感情の機微に愚鈍であることを感謝するしかない。

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