The second day
煌帝国に帰ってきて二日目。
私は既視感を覚えながら、紅玉にお説教を聞かされていた。
「もう一度ジュダルちゃんを振向かせるのよ」
昨日と同じく大きな音を立てて机を叩いた紅玉の前で、私は正座をしていた。
「なまえがジュダルちゃんを誘惑すれば、ジュダルちゃんも気が変わるに決まってるわぁ」
「ゆ、誘惑って…!」
「なまえはジュダルちゃんが好きなのよね?」
「う、それは、その……はい」
あーだこーだと私とジュダルの関係を変えるべく策を練る紅玉。どうやら、帰国してから何もない私たちにやきもきしているのは、まだ続いているらしい。
「私考えたの。ジュダルちゃん相手に健気に待ってたって無駄よ。こっちからどんどん攻めていかないと」
「せ、攻める」
「そうよ!たとえば…その、てて、手を繋ぐとか……」
「む、無理だよ今のジュダルになんて!」
前はよくジュダルと手を繋いだ。手を繋ぐどころか、抱きしめてくれたりもした。けど惚れ薬のない今、ジュダルに手を繋いでくれだなんて、口にできない。
「それに拒否されたら、さすがに凹む…」
「ジュダルちゃんが本気でなまえを拒むはずないわよぉ」
「紅玉ちゃん、毎回どこからそんな自信くるの…」
「! そうよ!昨日はジュダルちゃんに邪魔されて言えなかったんだから!」
「? 何を…?」
うっかり尋ねた私に興奮気味に紅玉が口にした言葉で、私はしばらく何も考えられなくなってしまうのだった。
とぼとぼと、用事で居なくなった紅玉の元を去り、私は当てもなく歩いていた。
部屋でじっとしていても良かったのだけれど、どうしてもそんな気分になれなかったのだ。
「ジュダルちゃん、なまえがいない間ずっとイライラして、手がつけられないほど機嫌が悪かったのよぉ」
「……そんなの、どう…受け取ればいいの…」
最近のジュダルがイライラしているかと言われれば、まあ今もしているのだけど。紅玉は、私がいなかった間は今の比ではないと言うのだ。
「…………だって、ジュダルだし……」
「俺がなんだって?」
「?!!」
突如聞こえた声に振り返ると、相変わらず機嫌が悪そうなジュダルがこちらをじとりと見つめていた。
こんなところで一体何をしていたのだろうか。どうしたの、と尋ねてみても返ってくる言葉は「別に」という素っ気ないもの。
彼が私を好きだった頃に帰りたい、なんて傲慢なことは言えないけれど、でも、あの頃みたいに、もう少し楽しげに話ができたらな、と思ってしまうのは、ジュダルにとっては迷惑なのだろうか。
「またババアのとこ行ってたのかよ」
「えっ。う、うん…」
正直に頷けばジュダルはまた機嫌が悪そうにため息を吐いた。
つい気分が落ち込んで、私と話すだけで機嫌が悪くなってしまうのでは、とまで考えてしまっていると、
「あのさあ」
「は、はい!」
「ババアとばっか遊んでんじゃねーぞ!お前は俺のオモチャなんだからな!」
ジュダルは機嫌が悪そうに、だけどどこか拗ねたような顔で、そう言ってのけたのです。