The fourth day







  昨晩危機的状況から救ってくれた少女、紅玉の私室でぽつんと座っているなまえ。
 扉の開く音と同時に漂う甘い香りに、思わず昨日のことを思い出す。
 ほんの少しだけ顔に熱が集まるのを感じていると、紅玉は彼女の前で手のひらを振った。


「あっごめん!ぼーっとしちゃって…」
「それくらい気にしなくていいのよぉ、初めてお友達ができたんだものぉ…」

うっとりとした表情で空中を見上げる紅玉姫に、思わずなまえは苦笑した。
けれど彼女を好意的に思っていたなまえにとっては断る筈も無い話だ。

「でもジュダルちゃんの部屋で初めて見たときはびっくりしたわ…知らない人がいるんだもの」
「あははは…ジュダルちゃんに突然連れてこられちゃって」
「そ、そそそ、それにジュダルちゃんと、だ、だだ、抱きっ」
「その件については全然気にしなくていいから!あはは…!」

先ほどまで考えていたことを再び思い出すことになってしまい、笑うしかないなまえ。
彼女と同じく昨日の事を思い出し顔を赤く染めていた紅玉だったが、
やがてその顔を無垢な探検家のような表情へと変化させた。

「で、ジュダルちゃんとはどういう関係なの?!」
「だっ…!だからその件については…!!」

興味津々な紅玉の表情に、どうしたものかと頭を悩ませる。
惚れ薬の話を話すか?いや、そんなことをすれば追い出されてしまうかもしれないし、
尚且つ彼女の前で七海の覇王、シンドバッドの名を出すのは気が引けた。しかし、


「おいババアー!!なまえ何処やったんだよ!」

 その危機を今度は、ジュダルに救ってもらうことになったのだった。



「……――なまえ。大体お前はなあ…!」
「………」

くどくどと、小一時間ほどお説教と呼べるかどうかも分からない話を聞いていて、
これならさっきとあんまり状況が変わっていないじゃないか…とげんなりするなまえ。

なんだか訊ねられるのも話されるのも考えること全てが面倒になってきて、
こてんと向かい合っていたジュダルの膝(というか組み敷かれた足)の上に倒れこむ。
それを見たジュダルが真っ赤になって彼女を見つめていたことも知らず、彼女はそのまま眠ろうとした。

うとうとと瞼が重く目を開けているのが億劫になっていた彼女の身体を抱き上げ、寝具の上へと運ぶ。
ふかふかのベッドに、ふわふわのふとん。
あまりの心地よさにお礼を言おうと、重い瞼をほんの少し開けてジュダルの顔を見る。

「…おやすみ、なまえ」
「………っ…」

彼のその、あまりに不自然なほど綺麗で優しい微笑みに、なまえは動揺を隠し切れなかった。
そっとなまえの身体を抱き寄せて、自らもその眠ってしまおうと、ジュダルはその長い睫毛を伏せた。

「(…ジュダルちゃん……)」

なまえは彼に自分の心音が聞こえてしまわないか心配で仕方が無かった。
けれど、彼はそんなこと気にもしないかのように、すやすやと綺麗な笑顔で眠っていた。




4日目

(ジュダルが、笑った。)






 

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