「なまえさーん」
「いらっしゃい、鳴くん」
教室に入った途端、既に準備万端のなまえさんが待ち構えていた。思ってもみなかった光景にきょとんとしていると、なまえさんは早く早くと手を引いて俺に座らせた。
「随分やる気だねえ、なまえさん」
「だめなの?」
「んーん、だめじゃないよ」
むしろ好都合、と呟くのは心の中だけにしておいて、俺は促されるままに椅子に座った。
「昨日鳴くんすごく頑張ってたでしょ?だから私も気合い入れないとって思ってさ」
「なまえさん‥‥」
なまえさんの俺を想う発言に、目頭が熱くなった。
なまえさん、もしかして俺のこと大分好きになってるんじゃないの?きっとそうだよ、そうじゃなかったらこんなに優しくしたりしないよ。マネージャーの時から優しかったけどそれはとりあえず置いておいて。
難攻不落とも思えた城が少しずつ崩れていく音が聞こえるような錯覚に陥りながら、そっとなまえさんの手を握った。なまえさんは小さく笑ったかと思うと、握っていない方の手でそっと俺の頭を撫で始めた。ちょっとどきどきしてきた。なまえさん、すっげー優しい目で俺のこと見てんだもん‥‥
「私弟がいてね、まあ鳴くんとは結構離れてるんだけど‥‥」
「‥おとう、と‥?」
「鳴くんに甘えられると思い出すんだよね‥‥元気かなあ‥‥」
「‥‥‥‥」
前言撤回。この人はまだまだ、難攻不落で鉄壁の要塞だ。
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